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梅雨前の偵察

久万城を巡る攻防が続く中、本多正信には別の役目が与えられていた。


土佐へ入り、中村御所や岡豊城周辺を探り、長宗我部の後方を撹乱することである。


旅僧や商人を装いながら、本多は各地を歩いた。


中村御所では人々の様子を見て回り、土豪や商人から密かに話を聞く。


さらに岡豊近くまで足を延ばし、蔵や兵站の様子も探らせた。


数日後、本多は密かに配下を集める。


「どうだ。」


一人が答えた。


「長宗我部はほぼ総動員にございます。」


「村々の若者も多く兵へ取られ、国元には老人や女子どもばかりが残っております。」


別の者も続ける。


「蔵も見ましたが、兵糧は思ったほど残っておりませぬ。」


「火薬も節約している様子で、大量に備蓄している気配はありません。」


本多は静かに頷いた。


「やはりそうか。」


長宗我部は久万城攻略に全力を注いでいた。


そのため兵も物資も前線へ送り込み、国元には余力がほとんど残されていない。


一見すれば好機にも思えた。


しかし本多は首を横へ振る。


「今ここで火を付けても、大きな動きにはならぬ。」


「残っている者は戦える兵ではない。」


「米も火薬も乏しい以上、城を落とそうにも力が足りぬ。」


「無理に撹乱すれば敵を警戒させるだけだ。」


本多は地図を広げ、静かに指を久万城へ移した。


「勝負は後方ではない。」


「前線にある。」


「陶殿がどこまで敵を引きつけているか、この目で見よう。」


そう言うと、本多は任務を切り替えた。


再び旅姿となり、荷駄隊や雑兵に紛れながら長宗我部軍の行軍へ溶け込む。


目指す先は久万城。


戦の趨勢を左右する山城へ、本多正信は静かに歩みを進めた。

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