河野家に参る
二月初頭。
摂津で十分に英気を養った那須資忠は、いよいよ四国へ渡る決意を固めた。
毛利家との新年の会見は滞りなく終わり、佐野昌綱が西国との橋渡しを務めたことで、瀬戸内の航路にも安心して船を出せる見通しが立っていた。
那須は佐野より借り受けた兵と、旧陶家臣団、さらに本多正信や石川数正らを率い、坂東ガレオンへ乗り込む。
冬の瀬戸内は静かであった。
船団は淡路を経て一路伊予を目指す。
数日後、一行は河野領へ到着した。
迎えたのは河野家の重臣たちである。
「那須殿、お待ちしておりました。」
河野家当主は自ら那須を迎え入れると、家臣たちの前で静かに告げた。
「約束どおり、城をお預けする。」
「これより那須殿には河野家の客将として、この城を拠点に西国の安寧のため力を尽くしていただきたい。」
那須は深く一礼した。
「ありがたく拝領いたします。」
「那須家の名において、この地を守り、河野家のお力となることをお誓いいたします。」
河野家中もまた、この若き武将へ大きな期待を寄せていた。
四国を巡り、長宗我部の実情をその目で見てきた男。
那須与一の末裔として名高く、阿波では一条家を救い、土佐では敵情を探り、伊予では河野家の信頼を得た武将である。
その日、那須家は河野家より一城を預かり、西国における最初の本拠を得た。
四国の均衡を守るための新たな歩みが、ここから始まろうとしていた。




