阿波城軍議・将の配置
松永久秀の「一条こそ第一の戦功」という提案に、香川・十河・安宅の三将も異を唱えなかった。
阿波の一城を一条兼定へ与え、四国における旗頭とする。
その方針は、その場でおおむね了承された。
やがて久秀は扇を閉じ、少し困ったような顔を作る。
「ただ……一条殿お一人では、いささか心もとない。」
「できれば、我が弟を遣わしたいと思うのですが。」
その言葉に座が一瞬静まる。
次の瞬間、陶晴賢が呆れたように眉をひそめた。
「……久秀。」
「お前の弟は、この前の戦で討たれておるではないか。」
下間頼廉は思わず吹き出し、篠原長房も苦笑する。
那須資忠は真顔で、
「一瞬、本当におられたのかと思いました。」
と首を傾げた。
久秀は何事もなかったかのように扇を広げる。
「これは失礼。」
「つい、いてくれれば便利だと思いましてな。」
座には苦笑が広がり、張り詰めていた空気も少し和らいだ。
やがて久秀は表情を改める。
「冗談はさておき。」
「讃岐は香川殿、十河殿、安宅殿の三将がおられる。」
「回復した城々も、お三方なら十分お守りいただけましょう。」
三将は静かに頷いた。
久秀は阿波の地図へ目を向ける。
「ですが阿波は違います。」
「城は取り戻しましたが、任せられる将が足りませぬ。」
「佐野様。」
「畿内より、お力添えを願えませぬか。」
佐野昌綱はしばらく地図を見つめ、静かに答えた。
「将を送ることに異論はありません。」
「ですが、すぐには動かせる者がおりません。」
すると篠原長房が一歩進み出る。
「それでしたら、お任せください。」
「住吉大社の剣術奉納祭で見込んだ者たちがおります。」
「さらに本願寺にも声をかけましょう。」
「腕の立つ者、統率のできる者を選び、阿波へ送り込みます。」
下間頼廉も頷く。
「本願寺にも戦を知る者は少なくありません。」
「人選は私も力を尽くしましょう。」
久秀は満足そうに笑みを浮かべた。
「ありがたい。」
「それまでの間は、わたくしが阿波へ逗留いたしましょう。」
「一条殿が快復され、新たな将が揃うまで、この地を預かります。」
佐野も静かに頷く。
「お願いします、松永殿。」
こうして軍議はまとまり、一条兼定は阿波の旗頭として療養に入り、その留守を松永久秀が支え、讃岐は香川・十河・安宅の三将が守るという、新たな四国の体制が形作られていった。




