朝廷よりの任官
五月、若葉が伊丹の山々を鮮やかな緑に染める頃。
摂津国伊丹城には、朝廷より勅使が訪れた。
迎えたのは佐野昌綱をはじめ、細川、一色、筒井順慶、下間頼廉、今井宗及ら重臣たち。そして足利家の姫・千陽も正装にて列席していた。
勅使は静かに宣旨を広げる。
「近衛前久卿の奏請により、朝廷は其の功を嘉す。」
「佐野昌綱は、将軍家に忠節を尽くし、畿内の乱を鎮め、社寺を保護し、摂津・河内・和泉の安寧に大きく寄与した。」
「よって従四位下、左近衛少将に任ず。」
一同が深く頭を垂れる。
勅使はさらに声を続けた。
「また、摂津国をよく治める功をもって、摂津守を兼ね任ずる。」
城内には静かな感嘆の空気が広がった。
左近衛少将。
そして摂津守。
いずれも武家にとってこの上ない名誉であり、朝廷が佐野を畿内の柱石と認めた証であった。
佐野は静かに一歩進み出ると、深く拝礼した。
「身に余る光栄にございます。」
「この官位は、我が身を飾るためのものではございませぬ。」
「乱を鎮め、人々が安心して暮らせる世を築く責として、謹んで拝受いたします。」
勅使は満足そうに頷く。
「近衛殿が申された通りのお方にございますな。」
「武をもって乱を鎮め、文をもって人を集める。」
「朝廷も大いに期待しております。」
宗及は隣の順慶へ小さく囁いた。
「これで佐野様は名実ともに朝廷の重臣にございます。」
順慶も静かに笑みを浮かべる。
「当然のことであろう。」
「この数年、誰よりも畿内を駆け回ったのはあのお方だ。」
千陽は佐野の姿を見つめていた。
兄・義輝が信じ、命を託した武士。
その背中は、もはや一国一城の将ではない。
朝廷に認められ、人々に慕われ、武と文の双方で乱世を変えようとする一人の柱であった。
佐野は静かに宣旨を受け取り、もう一度深く頭を下げる。
伊丹城には祝賀の鐘が鳴り響き、家臣も町人も口々に新たな摂津守の誕生を祝い合った。
この日、佐野昌綱は朝廷より正式にその功績を認められ、畿内復興を担う武将として新たな一歩を踏み出した。




