二月、学友来たる
永禄九年二月。
正月の評定から一月。
摂津では国づくりが着々と進んでいた。
鍛冶町には備前、山城、大和、敦賀、そして坂東から職人が集まり始め、酒蔵では新酒の仕込みが始まる。京、大和、堺で佐野が築いた人の縁は、戦の終結とともに商いへと姿を変え、摂津の復興を力強く支えていた。
そんな折、伊丹城へ二騎の一団が到着する。
那須資忠。
そして鹿島政清。
兵学館で机を並べ、ともに鍛錬を積んだ佐野の学友である。
城門まで迎えに出た佐野は、二人の姿を見つけると笑みを浮かべた。
「よう来た。」
那須も馬を降りながら笑う。
「まずは挨拶だ。四国へ向かう前に寄れと氏治様から仰せつかってな。」
鹿島も続く。
「俺も同じだ。土浦の甲冑師と鍛冶、それに氏康殿から預かった相州伝の名工を無事に送り届けてきた。」
「道中、何事もなく着いたぞ。」
佐野は二人の肩を軽く叩いた。
「ありがとう。これで摂津の鍛冶町も本格的に動き出せる。」
三人はしばし兵学館時代の思い出を語り合い、旧交を温めた。
やがて一色藤長が広間へ姿を見せる。
「殿、一条家より急使が参っております。」
空気が一変した。
使者は深く頭を下げ、静かに告げる。
「長宗我部の圧力により、中村御所を維持することが叶わず、一条兼定様は退去を余儀なくされました。」
「つきましては、一時畿内へ身を寄せることをお許しいただきたく存じます。」
那須と鹿島は顔を見合わせる。
四国へ向かう前から、情勢は想像以上の速さで動き始めていた。
佐野は静かに頷く。
「藤原の名門を見捨てることはできぬ。」
「まずは和泉へ迎えよう。」
「頼廉殿に頼み、仮の御所を設けていただく。」
そして佐野は二人の学友を見た。
「那須、四国へ渡るのは少し待て。」
「鹿島もだ。」
「まずは松永久秀殿を伊丹へ招く。」
「淡路と四国を最もよく知るお方だ。」
「皆で知恵を合わせ、最善の道を考えよう。」
二人は力強く頷いた。
「承知した。」
四国へ向かう旅は、まず伊丹での軍議から始まることとなった。




