集結、高屋城
畠山軍の攻勢は激しかった。
河内へ入ったばかりの篠原長房は、統治を優先して兵を各地へ配置していたため、兵力を一点に集めることができない。
畠山高政はその隙を見逃さなかった。
守護家再興の旗を掲げた軍勢は怒涛の勢いで押し寄せ、篠原軍の守る支城を次々と攻め立てる。
ついに一城が陥落した。
「城を放棄せよ!」
長房はいたずらな籠城を避け、兵を失わぬことを選ぶ。
篠原軍は秩序を保ったまま後退し、高屋城周辺へ戦線を縮めた。
しかし畠山軍は勢いに乗り、そのまま追撃を続ける。
その報は和泉にも届いた。
「河内危うし。」
下間頼廉は迷うことなく立ち上がる。
「河内は摂津の盾。ここを失うわけには参りませぬ。」
和泉に置いていた精鋭を率いると、昼夜を分かたず河内へ進軍した。
頼廉は到着すると直ちに篠原軍へ合流し、退却する兵をまとめ上げて追撃する畠山軍を食い止める。
ようやく戦線は持ちこたえた。
だが、その頃にはもう一つの軍勢が河内へ迫っていた。
淡路の松永久秀である。
知らせを受けてからの動きとしては、あまりにも早かった。
「まるで最初から戦を知っていたようだ。」
「いや、河内にも淡路にも間者を張り巡らせていたのだろう。」
様々な噂が兵の間を飛び交う。
当の久秀は何も語らない。
ただ飄々と笑みを浮かべながら、
「河内が騒がしいと聞けば来ぬわけにもいきますまい。」
とだけ答えた。
久秀の軍勢が戦線へ姿を現すと、篠原軍も下間軍も大きく士気を回復する。
しかし兵数ではなお畠山軍が勝る。
篠原、下間、松永――いずれも摂津・河内の連戦を終えたばかりであり、率いるのは疲労を抱えながらも鍛え抜かれた精鋭たちであった。
数で押し返す余力はない。
その緊迫した戦場へ、一団の旗印が姿を現す。
「佐野様だ!」
白地に雷霞の旗が秋風を受けて翻る。
佐野昌綱率いる摂津本隊が、ついに河内へ到着したのである。




