伊丹城改修評定
評定の終わり、佐野は大きく広げられた縄張図を家臣たちの前へ置いた。
「これより伊丹城を改める。」
一同の視線が図面へ集まる。
佐野は本丸を指した。
「本丸は敦賀気比神社分社とする。戦のための中心ではなく、国を護る神々の鎮まる場所とする。」
続いて、本丸に隣接する現在の御殿を示す。
「この御殿は千陽の住まいとする。神域に寄り添い、礼法と神道を学びながら育てる。」
一色藤長は静かに筆を走らせた。
さらに佐野は二の丸を指した。
「二の丸には評定所、奉行所、蔵を置く。以後、政務はすべてここで執る。」
そして図面の外周へ指を滑らせた。
「しかし、それだけでは足りぬ。」
北畠具教が顔を上げる。
「殿?」
「摂津は坂東とは違う。朝廷、公家、本願寺、堺の商人、諸国の使者が絶えず訪れる。今の伊丹城では手狭だ。」
そう言うと、佐野は図面の外側へ新たな線を引いた。
「城を外へ広げる。
外堀をさらに掘り、新たな曲輪を築く。」
どよめきが起こる。
「新曲輪には私の居館を置き、来客用の客殿、家臣屋敷、普請場を整える。町もこれに合わせて広げる。」
北畠は感嘆した。
「守りを固めるだけではなく、城下町まで見据えた改修……。」
一色も図面を見つめながら頷く。
「これなら百人や二百人家臣が増えても十分収まります。」
空蝉は静かに笑った。
「神を城の中心に据え、人はその周りで暮らす……まことに佐野殿らしい城になりますな。」
佐野は最後に命じる。
「普請は直ちに始める。目標は正月。 分社建立とともに新たな伊丹城を完成させよう。」
「ははっ!」
こうして伊丹城では、従来の縄張りに満足することなく、外郭をさらに拡張する大普請が始まった。新たな堀と土塁、曲輪が築かれ、摂津を治める政治・信仰・軍事の中心にふさわしい大城郭へと姿を変えていくのであった。




