↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
433/1023

摂津守護、伊丹へ

永禄八年、幾多の戦乱を経て、佐野昌綱は摂津一国を預かることとなった。


居城に選んだのは伊丹城である。


しかし佐野は、この城を戦のためだけの城とはしなかった。いずれ本丸は気比神宮の分社「気比摂津神社」とし、千陽の御所を兼ねる新たな都とする構想を胸に秘めていた。


まずは城の大広間に、これまで苦楽を共にした者たちを集めた。


北畠具教、空蝉、下間頼廉、一色藤長、細川の旧臣、山城衆、本願寺衆、そして儀仗抜刀隊。


佐野は静かに一礼する。


「皆のお力がなければ、私は今日ここに立つことはできませんでした。この勝利は、私一人のものではありません。皆で得た平和です。本当にありがとうございました。」


大広間はしばし静まり返り、やがて深く頭を下げる者が続いた。


その時、水戸頼家が一歩前へ出る。


「佐野殿。」


佐野が顔を上げる。


「わしの役目はここまでだ。儀仗抜刀隊はそなたに預ける。わしは坂東へ帰る。」


広間に小さなどよめきが走る。


水戸は穏やかに笑った。


「氏治様もお待ちだ。それに、坂東にも育てねばならぬ若者がおる。これからは、おぬしが畿内を背負え。」


佐野は言葉を失った。


京へ来て以来、常に隣で導いてくれた上官であり、兄のような存在だった。


やがて深く頭を下げる。


「……ありがとうございました。私は必ず、この地を守り抜きます。」


水戸は佐野の肩を軽く叩いた。


「そういう顔ができるようになった。もう心配はいらん。」


その傍らで北畠具教が静かに口を開く。


「私は残ろう。北畠の家は既に伊勢を失った。ならば、この摂津を新たな故郷とし、佐野殿を支えたい。」


佐野は力強くうなずいた。


「よろしくお願いいたします。」


こうして水戸は坂東へ帰還し、北畠は摂津家中の重臣として佐野を支えることとなる。


畿内の新たな時代は、ここ伊丹から静かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。