生駒山突破
勝竜城包囲を解く戦いは、一日で決着のつくものではなかった。
佐野昌綱は焦らない。
北方からじわじわと三好軍の外縁を侵食し、陣地を一つずつ奪っていく。
敵が動けば鉄砲を浴びせ、退けば前進する。
決して深追いはせず、兵を誘い出しては削る。
その堅実な戦いは、まるで鑿で岩を削るようであった。
三好軍もまた応戦するが、包囲を維持するため大軍を一度に動かすことができず、前線は少しずつ押し込まれていく。
一方、その頃、生駒山では激戦が続いていた。
三好軍は山中へ巧みに伏兵を潜ませ、狭い山道へ誘い込んでは矢と鉄砲を浴びせる。
筒井順慶率いる大和勢は幾度も攻勢を試みたが、そのたびに押し返され、多くの負傷者を出していた。
「さすがは三好……。」
順慶は歯を食いしばる。
このままでは勝竜城への道は開かない。
しかし、その戦況を一変させる軍勢が奈良から現れる。
奈良で再び武装を整えた三河本願寺衆である。
その先頭に立つのは、本多正信。
正信は山道へ並ぶ門徒たちを見渡すと、静かに命じた。
「止まるな。」
「倒れても次が進め。」
「数こそ、今日の武器だ。」
法螺貝が鳴り響く。
三河本願寺衆は幾筋もの山道から一斉に押し寄せ、三好の伏兵を次々と包み込んでいく。
伏兵は少数であれば絶大な力を発揮する。
だが、四方から絶え間なく押し寄せる門徒の勢いを止めることはできなかった。
ついに三好軍の伏兵線は崩れ、生駒山の要所は次々と陥落する。
「突破したぞ!」
歓声が山々にこだました。
順慶はすぐさま全軍へ進撃を命じ、生駒山を越えて勝竜城方面への道を切り開く。
こうして西からは佐野昌綱、東からは筒井順慶。
二つの軍勢が、ついに勝竜城を包囲する三好軍へ向けて収束し始めたのである。




