天王山の誓い
天王山の陣には、日に日に救援の旗が集まり始めていた。
最初に姿を現したのは、本願寺顕如であった。
顕如は自ら白馬に跨り、僧兵や門徒を従えて佐野の本陣へ進む。
居並ぶ諸将を前に、顕如は静かに、しかし力強く告げた。
「将軍家との争いは、これまで互いの理があった。」
「されど今は違う。」
「義輝公は討たれ、京は焼かれた。」
「もはや三好に大義なく、正義なし。」
「本願寺は、この戦に加わる。」
その言葉に門徒たちは一斉に念仏を唱え、天王山に響き渡る。
佐野は深く頭を下げた。
「顕如上人のお力添え、心より感謝いたします。」
その日の夕刻、さらに一隊が山道を登ってきた。
先頭には松永久秀の姿があった。
しかし、その軍勢はあまりにも痛々しかった。
鎧は矢傷と刀傷に覆われ、旗は裂け、兵の数も出陣時の半数にも満たない。
佐野は思わず目を見開く。
「松永殿、そのお姿は……。」
久秀は馬を降りると、佐野の前で深く頭を垂れた。
「佐野殿……遅参、まことに申し訳ござらぬ。」
「本来であれば、将軍様が奈良へお移りになった後、三好と袂を分かち、この身をあなた方へ預けるつもりでおりました。」
「されど、事はあまりにも早く動きすぎました。」
久秀は一度言葉を切り、苦しげに息を吐く。
「この天王山へ向かう途中、三好方は私を裏切り者と断じました。」
「弟は殿軍を務め、討たれました。」
「兵も多くを失いました。」
そう語る久秀の声には、怒りよりも深い悔恨が滲んでいた。
佐野は静かに久秀へ歩み寄る。
「よくぞ、おいでくださいました。」
「亡くなられた方々の無念は、私たちが晴らします。」
久秀はゆっくりと顔を上げ、小さく頷いた。
こうして天王山には、佐野、筒井順慶、本願寺顕如、松永久秀という、それまで決して同じ陣営には並ばなかった者たちが一堂に会した。
それぞれ異なる理由で剣を執った者たちは、ただ一つ、勝竜城を救い、三好軍を打ち破るという目的のため、固く手を携えるのであった。




