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生駒山の対峙

生駒山岩窟の悲劇は、三好三人衆にとっても誤算であった。


兵へ取り立てるつもりであった門徒たちが激しく反発し、その果てに惨劇を招いてしまったのである。


生き延びた門徒たちは雪の山々を越えて大和へ逃れ、その知らせは瞬く間に筒井順慶のもとへ届いた。


順慶は即座に決断した。


「兵を集めよ。」


「今ならば間に合う。」


興福寺衆、筒井勢、大和の国人衆が雪を踏み分け、生駒山麓へ集結する。


兵数では三好軍に遠く及ばない。


それでも順慶は退かなかった。


「ここを越えさせれば奈良が危うい。」


「大和は我らが守る。」


三好三人衆もまた、予想外の事態に直面していた。


門徒との衝突で兵は疲弊し、補給も滞り始める。


さらに山道は雪で閉ざされ、思うように軍を進められない。


そこへ追い打ちをかけるように、新たな報が届いた。


「勝龍寺城より真壁勢が動きました!」


「山崎の兵が河内方面へ進出しております!」


真壁幹久は勝龍寺城を出ると、大軍を率いているように見せかけながら街道各所へ兵を散開させた。


狼煙が次々と上がり、伝令が駆け回る。


三好軍には、小田勢が後背を断ちに来たように映った。


三好長逸は静かに地図を見つめる。


「……ここで大和へ踏み込めば、退路を失う。」


岩成友通も頷く。


「順慶が正面。」


「真壁が背後。」


「雪の山では兵站も保たぬ。」


三好政康が静かに結論を下した。


「ここは退く。」


「春を待とう。」


三好軍は混乱することなく陣を整え、隊列を崩さぬまま河内側へ後退を始めた。


順慶は深追いを命じなかった。


「敵はまだ力を失ってはおらぬ。」


「雪が味方してくれたのだ。」


生駒山には再び静寂が戻る。


しかし、その雪の下には多くの門徒たちの血が眠っていた。


後に人々は、この冬の一連の出来事を「生駒山岩窟の悲劇」と呼び、三好三人衆の名は門徒たちの間で深い怨恨とともに語られることになる。


そして三好三人衆もまた、この冬の失敗を教訓とした。


次に刃を振るう時は、正面からではない。


より確実に、より素早く、ただ一つの標的――将軍足利義輝を討つために。

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