坂東ガレオンの会談
宗及がなおも書状を見つめていると、少弐冬明は静かに立ち上がった。
「実は――。」
そう言うと、船室の隅に積まれていた長持ちを開く。
中には藁と布で丁寧に包まれた茶碗が幾つも納められていた。
冬明はそのうちの一つを慎重に取り出し、卓上へ置く。
深い飴色の釉薬。
素朴ながら力強い姿。
宗及は思わず身を乗り出した。
「これは……。」
「ルソンにて求めました。」
続いて二つ、三つと並べられる。
青みを帯びたシャムの器。
琉球渡りの焼物。
南蛮船が運んだ異国の茶入。
卓の上は、たちまち異国の色彩で埋め尽くされた。
宗及は一つを手に取り、重さを確かめる。
「見たことのない焼きですな……。」
冬明は穏やかに微笑んだ。
「氏治様は、この日のために長く構想を温めておられました。」
「私が召し抱えられてからというもの、海外へ赴くたびに少しずつ買い集めてまいりました。」
「ですから――。」
冬明はゆっくりと一同を見渡す。
「南蛮渡りの品は、すでに揃っております。」
船室が静まり返る。
宗及は思わず笑みを漏らした。
「なるほど……。」
「だから書状に、海外の品は小田が集めるとあったのですか。」
「ええ。」
冬明は頷く。
「残るは日本各地の名物のみ。」
「瀬戸、美濃、備前、信楽、丹波、唐津……。」
「それらは堺のお力をお借りしたい、と氏治様は申されております。」
宗及は茶碗を静かに卓へ戻した。
「海外は小田。」
「国内は堺。」
「これなら、まさしく天下の品評会になりますな。」
佐野は並べられた異国の茶碗を見つめる。
氏治は、この企画を思いついたのではない。
実現するために、何年も前から一つずつ駒を進めていたのである。
その周到さに、佐野は改めて主君の先見の明を感じていた。




