坂東ガレオンの会談
敦賀から京へ戻って数日。
佐野昌綱のもとへ、再び氏治からの書状が届いた。
封を切ると、短く命が記されていた。
> 「直ちに堺へ向かえ。」
「新たな務めを命ずる。」
理由は書かれていない。
氏治らしい簡潔な命令であった。
佐野は水戸頼家と空蝉へ知らせると、三人はその日のうちに堺へ向かった。
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港へ着いた佐野は、思わず足を止めた。
「……あれは。」
沖合に、一隻の巨大な船が碇を下ろしていた。
高くそびえる三本の帆柱。
重厚な船体。
船首には坂東藤原の旗が風を受け、大きくはためいている。
坂東ガレオンであった。
鹿島政清が指揮する小田水軍最大級の外洋船。
その堂々たる姿は、堺中の人々の目を引いていた。
水戸は思わず口笛を吹く。
「でけぇな……。」
空蝉も珍しく感心したように船を見上げる。
「城が浮かんでるみてぇだ。」
その時、一人の武士が桟橋を渡ってきた。
日に焼けた顔。
潮風に鍛えられた体つき。
男は三人の前で深く頭を下げた。
「お待ちしておりました。」
「小田家家臣、少弐冬明にございます。」
佐野も礼を返す。
「初めてお目にかかります。」
冬明は穏やかに微笑んだ。
「氏治様のご命令により、お迎えに参りました。」
「会談の場は船内にございます。」
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ほどなくして今井宗及も港へ姿を現した。
巨大な船を見上げるなり、目を輝かせる。
「これが坂東ガレオン……。」
「ぜひ一度、乗せていただきたいものですな。」
冬明は笑みを浮かべた。
「そのためにご案内いたします。」
一行は小舟に乗り換え、ゆっくりと坂東ガレオンへ向かう。
舷側に横付けされると、水兵たちが一斉に敬礼した。
甲板へ上がった宗及は、周囲を見回しながら感嘆する。
「これは見事……。」
「もはや船ではなく、海に浮かぶ館です。」
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やがて一行は船内中央の広間へ案内された。
磨き上げられた板張りの床。
異国の絨毯。
航海図と世界地図。
そして円卓には、各地から運ばれた茶碗や茶入、香木が整然と並べられている。
少弐冬明が席に着く。
佐野、水戸、今井宗及も続いた。
冬明は氏治から預かった書状を卓上へ置く。
「これより、小田氏治様より託された新たな構想について、お話しいたします。」
宗及は静かに姿勢を正した。
巨大な坂東ガレオンの広間で、堺と小田を結ぶ新たな計画が、いま始まろうとしていた。




