表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
376/1023

坂東ガレオンの会談

敦賀から京へ戻って数日。


佐野昌綱のもとへ、再び氏治からの書状が届いた。


封を切ると、短く命が記されていた。


> 「直ちに堺へ向かえ。」


「新たな務めを命ずる。」




理由は書かれていない。


氏治らしい簡潔な命令であった。


佐野は水戸頼家と空蝉へ知らせると、三人はその日のうちに堺へ向かった。



---


港へ着いた佐野は、思わず足を止めた。


「……あれは。」


沖合に、一隻の巨大な船が碇を下ろしていた。


高くそびえる三本の帆柱。


重厚な船体。


船首には坂東藤原の旗が風を受け、大きくはためいている。


坂東ガレオンであった。


鹿島政清が指揮する小田水軍最大級の外洋船。


その堂々たる姿は、堺中の人々の目を引いていた。


水戸は思わず口笛を吹く。


「でけぇな……。」


空蝉も珍しく感心したように船を見上げる。


「城が浮かんでるみてぇだ。」


その時、一人の武士が桟橋を渡ってきた。


日に焼けた顔。


潮風に鍛えられた体つき。


男は三人の前で深く頭を下げた。


「お待ちしておりました。」


「小田家家臣、少弐冬明にございます。」


佐野も礼を返す。


「初めてお目にかかります。」


冬明は穏やかに微笑んだ。


「氏治様のご命令により、お迎えに参りました。」


「会談の場は船内にございます。」



---


ほどなくして今井宗及も港へ姿を現した。


巨大な船を見上げるなり、目を輝かせる。


「これが坂東ガレオン……。」


「ぜひ一度、乗せていただきたいものですな。」


冬明は笑みを浮かべた。


「そのためにご案内いたします。」


一行は小舟に乗り換え、ゆっくりと坂東ガレオンへ向かう。


舷側に横付けされると、水兵たちが一斉に敬礼した。


甲板へ上がった宗及は、周囲を見回しながら感嘆する。


「これは見事……。」


「もはや船ではなく、海に浮かぶ館です。」



---


やがて一行は船内中央の広間へ案内された。


磨き上げられた板張りの床。


異国の絨毯。


航海図と世界地図。


そして円卓には、各地から運ばれた茶碗や茶入、香木が整然と並べられている。


少弐冬明が席に着く。


佐野、水戸、今井宗及も続いた。


冬明は氏治から預かった書状を卓上へ置く。


「これより、小田氏治様より託された新たな構想について、お話しいたします。」


宗及は静かに姿勢を正した。


巨大な坂東ガレオンの広間で、堺と小田を結ぶ新たな計画が、いま始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ