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夜明けの再会

琵琶湖を後にした二人は、峠を越え、越前の国へ入った。


日本海から吹く潮風が頬を撫で、遠くには気比の杜が霞んで見える。


あと半日も歩けば気比神社だった。


しかし空蝉は歩みを止めた。


「今日はここまでだ。」


「明日の朝、一番に行く。」


佐野は何も尋ねなかった。


故郷へ帰る者には、故郷へ帰る者の覚悟がある。


その夜、二人は気比神社を望む丘の麓で野営した。


空蝉は焚き火を見つめたまま、ほとんど眠らなかった。


そして夜が明ける。


東の空が白み始める頃、二人は静かに歩き始めた。


朝露に濡れた参道の先。


まだ人影もまばらな気比神社では、一人の男が竹箒を手に境内を掃き清めていた。


年は空蝉とほとんど変わらない。


端正な顔立ち。


立ち姿。


その横顔は、若き日の空蝉を映したようによく似ていた。


男の名は――気比継彦。


空蝉の腹違いの弟である。


兄が家を出てから幾十年。


継彦は毎朝、夜明け前になると誰より早く起き、門前を掃くことを日課としていた。


神を迎えるためでもある。


参拝者を迎えるためでもある。


そして、もう一つ。


幼い日に別れた兄が、いつの日か帰ってくるかもしれない。


その時、最初に迎える者でありたい。


その一心で、何十年もの間、一日も欠かさず箒を持ち続けてきた。


その朝もまた、いつもと同じ朝のはずだった。


竹箒を動かしていた継彦の手が、不意に止まる。


参道の彼方に、二つの人影が見えた。


一人は武士。


もう一人は、旅僧のような男。


だが、その男の歩き方、その立ち姿、その顔立ち。


継彦は息を呑んだ。


空蝉も歩みを止める。


二人の視線が、朝靄の中で交わった。


瓜二つだった。


何十年という歳月が流れ、互いに白いものが混じっていても。


兄と弟は、一目で分かった。


確かめる言葉など、いらなかった。


継彦の手から竹箒が静かに滑り落ちる。


空蝉は、かすかに笑った。


その笑顔は、少年だった頃の兄と少しも変わっていなかった。

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