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鷹司家への招き 公家と武家

鷹司当主は氏治の言葉に深く頷くと、静かに茶を口へ運んだ。

「左近衛中将殿。」

「武家がこのようなことを申すとは思いませなんだ。」

氏治は穏やかに答える。

「私も坂東に生まれ育ちました。」

「若き頃は、武とは勝つためのものと思っておりました。」

「しかし、勝った先にも争いは終わりませぬ。」

「戦で国は奪えても、人の心までは従えられませぬ。」

鷹司当主は興味深そうに身を乗り出した。

「では、そなたは何を望む。」

氏治は迷いなく答えた。

「朝廷を中心に、武家と公家が互いに支え合う国にございます。」

「武家は国を守り、公家は国を導く。」

「どちらが欠けても、国は長く続きませぬ。」

広間は静まり返った。

公家たちも思わず氏治を見つめている。

やがて鷹司当主は微笑んだ。

「なるほど。」

「佐野昌綱殿が命を懸けて推挙した理由が、ようやく分かりました。」

その時、襖の向こうで小さな物音がした。

鷹司当主は苦笑する。

「聞いておったか。」

襖がゆっくりと開き、一人の少女が恐る恐る姿を現した。

まだ十にも満たぬ幼い姫君である。

慌てて頭を下げる。

「申し訳ございません……。」

氏治は優しく微笑んだ。

「どうぞ、お気になさらず。」

「私どもの話は難しかったでしょう。」

少女は首を横に振る。

「……いいえ。」

「武家の方は、もっと怖い人だと思っていました。」

その言葉に真壁と笠間は思わず顔を見合わせ、苦笑する。

氏治も笑みを浮かべた。

「怖い者もおります。」

「ですが、武とは本来、人を守るために振るうものです。」

少女はその言葉を静かに聞いていた。

やがて小さく頭を下げる。

「ありがとうございます。」

鷹司当主は優しく娘を見つめた。

「失礼いたしました。」

「幼いゆえ、お許しください。」

氏治は首を横に振る。

「お気になさらず。」

「未来を担う若き方々が、このような話に興味を持ってくださることは、むしろ嬉しく存じます。」

その言葉に、鷹司当主は満足そうに頷いた。

「左近衛中将殿。」

「本日より、鷹司家は小田家と末永く親交を結びとうございます。」

氏治は深く一礼した。

「こちらこそ、坂東と朝廷を結ぶ懸け橋となれますよう、微力を尽くします。」

庭では初夏の風が木々を揺らしていた。

その穏やかな風景を眺めながら、幼い姫は一人の武将の姿を胸に刻む。

それはまだ幼き日の、ほんの短い出会い。

しかし、この日の邂逅が、やがて鷹司家と小田家を深く結ぶ大きな縁へとつながっていくことを、この場の誰もまだ知らなかった。

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