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第一回坂東大評定

会津大戦が終結したのは、実りの秋であった。

蘆名は滅び、佐竹は敗れ、会津にはようやく静けさが戻る。

しかし、氏治は祝いの宴を長く続けようとはしなかった。

「まずは民を安んじよ。」

その一言で、諸将はそれぞれの任地へ戻っていった。

宇都宮尚綱は黒川城へ入り、会津の鎮撫にあたる。

結城朝基は上野へ戻り、新田義綱とともに新領の整備を始めた。

小山義広は下総へ向かい、北条との往来を整えた。

真壁、笠間、宍戸らも常陸へ戻り、戦で傷んだ城や街道を修復し、民へ米や種籾を配る。

氏治自身も土浦へ戻り、兵学館と自由都市の整備に力を注いだ。

冬が深まるにつれ、不思議な噂が諸国を駆け巡る。

「坂東へ行けば、やり直せる。」

「敵将でも才があれば登用される。」

「兵学館では身分を問わず学べる。」

「自由都市土浦は、商人にも浪人にも門戸を開いている。」

その噂は、戦乱の中で行き場を失った者たちの胸に、小さな希望の灯をともした。

やがて土浦には、多くの者たちが姿を現す。

西国からは少弐一族。

松浦氏、大村氏、有馬氏。

尼子の遺臣。

陶末晴。

甲斐からは真田幸綱。

その後ろには武田以来の見聞の者たち。

そして、その先頭に立つ出浦盛清。

さらに各地の浪人や国衆たちも、

「小田氏治公に仕えたい。」

と土浦へ集まり始めた。

兵学館の学生たちは、

「また新しい先生が来るらしい。」

「西国の将まで来たそうだ。」

と胸を躍らせ、自由都市の商人たちは宿を増やし、市場は例年になく賑わった。

こうして年は改まる。

坂東となって初めて迎える新年。

氏治は諸将へ使者を送り、土浦への参集を命じた。

会津より宇都宮尚綱。

上野より結城朝基と新田義綱。

下総より小山義広。

常陸より真壁幹久、笠間幹永、宍戸政繁、水戸頼治、鹿島政清。

そして新たに仕官を願う諸将。

広間には坂東各地と西国から集まった将が居並び、これまでにない壮観となった。

家臣が氏治へ尋ねる。

「殿、お一人ずつ謁見を。」

氏治は穏やかに笑った。

「その必要はない。」

「皆を集めたのだ。」

「一々召し出す手間が省けた。」

その言葉に、広間には小さな笑いが起こる。

氏治は立ち上がり、坂東一円の地図を広げた。

「諸君、よく参られた。」

「今日この日より、そなたらは坂東を興す同志である。」

静まり返った広間で、氏治は続けた。

「坂東は広い。」

「会津、上野、下総、常陸、そして海。」

「余一人では治められぬ。」

「ゆえに今日、この場で登用し、この場で配属する。」

氏治は一人ひとりの名を呼び、役目を与えていく。

宇都宮尚綱には会津総督。

結城朝基には上野守護。

新田義綱には上野東部と北部。

小山義広には下総。

真田幸綱には上野西部。

出浦盛清には氏治直属の見聞方頭。

鹿島政清には海賊衆。

少弐には商販方。

松浦、大村、有馬には銚子。

尼子、陶末晴には香取。

古河を河川物流の中心とし、そこから小山、新田へ富と物資を流す体制も定められた。

真壁と笠間には常陸の譜代国衆を付け、水戸には北畠氏と佐野昌綱を配し、平時は常陸北部を守り、朝廷との往来を担わせる。

すべての任命が終わると、氏治は広間をゆっくりと見渡した。

「最後に一つ。」

「これより坂東の掟を定める。」

諸将は居住まいを正す。

「領国は広い。」

「会津から土浦まで来るだけでも日数を要する。」

「ゆえに諸将を度々呼び集めることはせぬ。」

氏治は力強く告げた。

「大評定は、新年に一度のみとする。」

広間が静まり返る。

「その時に一年の政を定め、戦功を論じ、恩賞を与え、人事を決める。」

「平時は各方面軍がその地を預かり、民を守り、国を富ませよ。」

「急変あらば見聞方を通じて余へ知らせよ。」

氏治は最後に微笑んだ。

「余は、そなたらを信じる。」

その一言に、広間の全員が深く頭を下げた。

「ははっ!」

新年の朝、小田家は一地方の戦国大名ではなく、坂東全土を治める新たな政権として歩み始めた。

後に歴史書は、この日をこう記す。

――第一回坂東大評定。

坂東の新たな時代は、この評定から始まったのである。

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