しるべが導く再会
館林は大内宿の名主・赤井の屋敷に身を寄せることとなった。
赤井は館林の顔を見た瞬間、亡き父の面影を重ね、涙ながらに迎え入れた。事情を知ると宿場の者たちにも口止めをし、空き家を兵の宿とし、兵糧や薪、馬の飼葉まで惜しみなく用立てた。
館林はその厚意に深く礼を述べると、
「結城殿らが来るまでは、この大内宿で待たせてもらう。」
と告げた。
それから数日。
館林は宿場の様子を見回り、雪解けの街道や会津方面の情報を集めながら、静かに結城兄弟の到着を待っていた。
昼下がりのことである。
青空高く、一羽の鷹が鋭く鳴いた。
「ピィーッ!」
館林が見上げると、しるべが宿場の上空を大きく旋回している。
南の街道へ飛んでは戻り、また飛んでは戻る。その様子は何かを知らせようとしているようだった。
名主・赤井も空を見上げる。
「館林様……あれは。」
館林は目を細めた。
「誰か来るな。」
赤井は思わず身構える。
「敵でございましょうか。」
館林は小さく笑い、腕を差し出した。
しるべは翼をたたみ、静かにその腕へ舞い降りる。
館林は優しく羽を撫でながら言った。
「いや、まだこいつには敵も味方も分からん。」
赤井は意外そうな顔をする。
「そうなのですか。」
「ああ。まだ付き合いは浅いからな。」
館林はしるべの頭を指先で撫でる。
「だが、よく育てられている。人を恐れず、異変があればすぐ知らせる。実に賢い鷹だ。」
しるべは館林の顔を見つめ、小さく鳴いた。
館林は街道の方を指差し、まるで言い聞かせるように穏やかな声で言う。
「覚えておけ。これから来る者たちは敵ではない。味方だ。」
しるべは一声高く鳴くと、再び空へ舞い上がった。
ほどなくして、雪解けの街道の彼方に二騎の騎馬武者が姿を現す。
先頭には堂々たる体躯の結城朝綱。
その隣には周囲へ鋭い視線を配る弟・朝基。
二人の後ろには、尾瀬を越えてきた兵たちが静かに続いていた。
館林は一歩前へ出ると、穏やかな笑みを浮かべる。
「待っていたぞ、結城殿。」
朝綱もまた馬上から軽く頭を下げた。
「館林殿。お待たせしました。」
朝基は館林の肩に止まったしるべを見て感心したように目を丸くする。
「これが噂の鷹ですか。」
館林は苦笑する。
「まだ敵味方は分からんらしい。だが、そのうち覚えるだろう。」
そう言って空を見上げると、しるべはまるで主人の言葉を理解しようとするかのように、結城兄弟の上を一度だけ大きく旋回した。
館林は赤井へ向き直る。
「紹介しよう。こちらが下野の名門・結城家の朝綱殿、そして弟の朝基殿だ。我らと志を同じくする頼もしい味方である。」
赤井は深々と頭を下げた。
「ようこそ大内宿へ。ささやかではございますが、お休みいただけるよう支度は整えております。」
朝綱は静かに礼を返し、朝基は宿場を見回して微笑む。
「よい宿場ですね。」
館林も頷いた。
「ああ。この宿があったからこそ、我らはここで落ち着いて合流できた。」
雪解けの風が宿場を吹き抜ける。
坂東の将たちはここで一つとなり、いよいよ会津への道を進み始めるのであった。




