座礁した要塞
従わない相馬に対して、村々を焼き払いながら進む蘆名・佐竹軍は、海沿いの街道を南へと押し進めた。
だが、海だけは違った。
鹿島衆は正面から艦隊決戦を挑まない。
潮の満ち引き、砂州、浅瀬、河口の流れを知り尽くした彼らは、そのすべてを戦場へ変えていく。
やがて沖合に数隻の坂東ガレオンが姿を現した。
敵将は鼻で笑う。
「この浅瀬まで来れば座礁する。」
だが、それこそが鹿島衆の狙いであった。
坂東ガレオンは速度を落とさず、そのまま砂州へ乗り上げる。
船底が砂を噛み、大きく震える。
しかし船は止まらない。
櫓を押し、帆を張り、さらに前へと進む。
半ば座礁したところでようやく動きを止めると、鹿島衆は待っていたかのように作業を始めた。
船腹から太い杭が打ち込まれ、綱が張られる。
盾板が並べられ、土俵や土嚢が積み上げられる。
たちまち一隻の船は、海に築かれた砦へと姿を変えた。
船首の大筒が火を吹く。
轟音とともに砲弾が敵陣へ突き刺さる。
続いて甲板のバリスタが唸りを上げ、巨大な矢が盾もろとも敵兵を貫いた。
接近する兵には、船腹の銃眼から鉄砲衆が次々と撃ちかける。
敵が砦となった船へ気を取られたその時だった。
沖合や入り江に潜んでいた小型船が一斉に姿を現す。
左右から回り込み、敵の舟や補給船へ襲いかかった。
「船を砦にしただと!」
蘆名・佐竹軍は海からも陸からも射撃を浴び、思うように近づくことすらできない。
鹿島衆は船を失うことを恐れなかった。
船は消耗品。
敵を止め、河口を守れればそれでよい。
こうして相馬の河口には、坂東ガレオンを要塞化した海上砦が次々と築かれ、蘆名・佐竹軍は浜通りへの進撃を海からも阻まれることになった。




