新年評定 ― 青苧の道
新しい年を迎えた。
土浦には早朝から祝砲代わりの太鼓が鳴り響き、霞ヶ浦には大小さまざまな船が絶え間なく出入りしていた。
今年最初の坂東大評定。
もはや坂東だけの評定ではない。
当然のように南奥から使者が訪れる。
相馬、岩城、白河の諸勢力はもちろん、小田との交易を望む者たちが列をなし、荷車には馬や漆、木材、鉄、硝石が積まれていた。
続いて北条からの使者が到着する。
鎌倉と潮来を結ぶ交易船団は港を埋め尽くし、相模からは木材や硫黄、柑橘、工芸品が運び込まれる。
さらに越後からも使者が現れる。
青苧を満載した荷船が幾筋もの列を作り、潮来の蔵屋敷へと吸い込まれていく。
それだけではない。
会津や越中、信濃、出羽など、各地の商人までが青苧を抱えて集まり、まるで日の本中の青苧が坂東へ集まってきたかのような光景が広がっていた。
潮来。
鹿島。
土浦。
三つの港町と城下町は、人と荷と馬で溢れ返る。
異国船も珍しくなくなった。
南蛮人。
明の商人。
琉球の船乗り。
ルソンやシャムの傭兵。
朝鮮の商人。
さまざまな言葉が飛び交い、市場では異国の香辛料や硝子、羊毛、砂糖、酒が並ぶ。
見物客もまた絶えることがない。
彼らが待ち望んでいたものがあった。
やがて潮来の街道から、太鼓の音が響く。
「始まるぞ!」
誰かが叫ぶ。
新装となった坂東軍が、潮来から土浦へ向けてゆっくりと行進を始めた。
先頭には軍旗「雷霞一撃」。
その後ろを、青苧を用いた新しい軍服に身を包んだ将兵が整然と歩む。
従来の和装とは異なる前開きの上衣。
動きやすい袴に代わる下衣。
革帯で腰を締め、季節に応じた外套を羽織る。
袖口は留められ、足元も歩きやすく整えられていた。
肩には坂東長筒。
腰には坂東刀。
兵は乱れなく歩き、隊列は一本の線のように伸びる。
沿道から歓声が湧き上がる。
「見ろ、あれが坂東軍か。」
「武士の姿が変わったぞ。」
「異国の兵のようでもあり、どこか日の本らしくもある。」
南蛮人たちも興味深そうに頷き、明の商人は布地の織り方を熱心に見つめ、越後から来た商人は誇らしげに呟いた。
「あれが越後の青苧で織られた軍服か。」
冬の陽光を浴びながら、新たな装いの軍勢は土浦城へ向かって進み続ける。
その姿は単なる閲兵ではなかった。
坂東が、武だけでなく産業と交易によって結ばれ、新しい時代へ歩み始めたことを、日の本中へ示す行進でもあった。




