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若き当主たちへ

夏の大評定も終わりに近づいた頃、宇都宮尚綱が静かに立ち上がった。

「殿。」

「一つ、お許し願いたきことがございます。」

氏治は穏やかに頷く。

「申してくだされ。」

宇都宮は一礼した。

「私も齢を重ねました。」

「次の大評定よりは、嫡男・朝綱にも評定への列席をお許しいただきたく存じます。」

評定の間が静まり返る。

宇都宮朝綱――かつて結城家の嫡男であったが、今は宇都宮家の養子となり、次代を担う嫡男である。

氏治は静かに頷いた。

「よかろう。」

「朝綱には、これより評定で政を学んでもらう。」

そして氏治は小山義広へ視線を向けた。

「小山殿。」

義広は一礼する。

「そなたも次の当主として、今後は評定に常に列席せよ。」

「はっ。」

氏治はさらに言葉を続けた。

「そして、館林殿、那須殿の跡を継ぐ若き当主たちも同じである。」

その名に、評定の空気が少しだけ沈んだ。

甲斐の戦で命を落とした館林と那須。

残された若き当主たちは、まだ兵学館で学ぶ年頃であった。

氏治は静かに言う。

「これよりは評定に列席し、国のことを学べ。」

「先達の話を聞き、諸将と顔を合わせ、国を治める術を覚えるのだ。」

しかし、その表情は次の瞬間、厳しく引き締まる。

「ただし、一つだけ掟を定める。」

「兵学館を卒業するまで、戦働きは一切許さぬ。」

「父祖の名に恥じまいと焦る必要はない。」

「まず学べ。」

「国を知り、人を知り、政を知れ。」

「兵学館を卒業して初めて、一人前の当主と認める。」

宇都宮尚綱は満足そうに頷いた。

「まこと、良き時代にございます。」

氏治は若き当主たちを見渡した。

「そなたらは坂東の未来だ。」

「未来を守るためにも、今は学び、育つことを第一とせよ。」

その言葉に評定の間にいた諸将は深く頭を下げ、新たな時代への決意を新たにした。

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