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小田御用地

さらに、土浦へは武田旧臣たちからも一通の書状が届いていた。

「新しき戦のやり方を習いし候。」

「つきましては、日々鍛錬する場をお与えくださいますようお願い申し上げ候。」

氏治は書状を読み終えると、腕を組んだ。

「困ったな……。」

治彦が隣で首を傾げる。

「何か問題でも?」

「五カ年計画では定めただろう。」

氏治は机の上の計画書を指で叩く。

「坂東はこの五年、自衛の戦以外は行わない。」

「兵は増やしても、戦を求める国にはしない。」

武田旧臣たちの願いはもっともである。

新たな戦術を学んでも、それを磨く場がなければ意味がない。

しかし、大軍を集めて演習を繰り返せば、周辺諸国に戦支度と受け取られかねない。

氏治はしばらく考え込み、やがて静かに口を開いた。

「ならば、戦ではなく狩りにしよう。」

その一言に、治彦は目を見開く。

「狩り……ですか?」

「狩り御用地を設ける。」

「平時は狩猟場として獣害を防ぎ、食料も得る。」

「必要な時だけ演習場として使えばよい。」

その案はすぐに採用された。

土浦郊外には広大な狩り御用地が整備され、森、草原、小川、起伏のある丘がそのまま残された。

兵は地形を読み、索敵し、連携を学ぶ。

平時は狩人や農民も利用できる土地であり、戦のためだけの施設ではなかった。

さらに鹿島から新たな報せが届く。

ブルネイより弾力に富む異国の樹液――ゴムがもたらされたのである。

氏治はそれを見て、ふと思いついた。

「これなら怪我を減らせる。」

木製の訓練銃にゴムを組み合わせ、実戦に近い操作ができる訓練用の道具が試作された。

弾も木球や革玉を用いることで、命を落とす危険を大きく減らすことができた。

土浦では、この訓練銃を用いた模擬戦が正式に許可される。

相手を務めるのは、鹿島配下のルソン傭兵団とシャム傭兵団であった。

彼らは異なる戦術を持ち、持ち回りで教導役となる。

武田旧臣たちは日々その戦い方に触れ、時には敗れ、時には学び、少しずつ新しい戦へ適応していった。

戦を禁じた五カ年計画は変わらない。

しかし、戦わぬ五年間だからこそ、鍛錬を怠らない。

氏治は演習を眺めながら静かに頷いた。

「平和は、備えを忘れた者には訪れない。」

土浦の狩り御用地には、今日も銃声に代わる掛け声が響き渡っていた。

それは戦を望む声ではなく、戦を遠ざけるための鍛錬の声であった。

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