下野国 宇都宮尚綱 書状
下野国、宇都宮尚綱、書状
謹んで申し上げます。
鶴岡八幡宮にて早川殿とのご婚儀、続いて筑波神社にて黄梅院様とのご婚儀を無事終えられましたこと、下野一同、心よりお慶び申し上げます。
坂東三国の絆がさらに深まりましたこと、何よりの吉報にございます。
さて、下野の近況をご報告申し上げます。
まず、革細工は順調に広がり、牛革を用いた盾や馬具に加え、履物や袋なども作られるようになりました。職人も育ち始め、ようやく産業として形を成しつつあります。
次に、下野でも陶器と切子細工を興したく存じます。
土浦に余力ある職人がおられましたら、しばらくお貸しいただけますでしょうか。技を学び、いずれは下野の職人として育てた後、上野・常陸へも送り出し、坂東全体へ技術を広めたいと考えております。
また、長年土地を見続けてまいりましたが、下野の冷涼な気候は養蚕に適しているように思われます。
桑畑を増やし、絹織物を下野の新たな産として育てることといたしました。
さらに、真壁殿より預かりました繁殖用の羊も順調に数を増やしております。
羊毛は保温に優れ、冬衣や毛布として申し分なく、下野では羊毛織物も興すことといたしました。
冬の寒さを思えば、これ以上ない恵みでございます。
しかし、その一方で夏には暑さが勝ります。
殿は異国の文物にも明るく、各地より珍しき品々を集めておられます。
もし羊毛や絹よりも涼しく、夏を快適に過ごせる布地や繊維をご存じでしたら、ぜひお教えいただけますでしょうか。
兵が鎧の下に着る衣、農民が野良に出る衣、子らが夏を過ごす衣。
坂東に住まうすべての者が、少しでも快適に暮らせるような衣を作りたいと願っております。
これよりも武のみならず、産業によっても坂東を支えてまいる所存です。
末筆ながら、殿ならびにご家族のご健勝と、坂東の末永き繁栄を心よりお祈り申し上げます。
敬具
宇都宮尚綱




