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坂東五カ年計画、最初の半年

坂東五カ年計画が始まって半年。

春に始まった改革は、夏を迎える頃には坂東各地へ大きく広がっていた。

小田城では氏治が半年ごとの進捗評定を開く。

「半年。」

「短いようで長い。」

「まずは現状を確認しよう。」

諸将は一斉に立ち上がった。

最初に報告したのは兵学館である。

治彦が白虎寮と玄武寮の記録を広げる。

「新式坂東長筒ですが、試験配備した部隊では高い評価を得ています。」

「長筒となったことで平均有効射程は従来型より伸びました。」

「一方で命中率、暴発率、故障率は従来型と同等です。」

氏治は満足そうに頷く。

「よい。」

「坂東筒は着実に進歩している。」

続いて盾用天蓋。

竹を骨組みとし、油を染み込ませた獣革で覆う構造は改良を重ね、雨天試験でも十分な成果を上げていた。

さらに坂東筒袋も正式採用となり、行軍中の銃の保護や整備時間の短縮に大きく貢献している。

そして最後に試作ホイールロック短筒。

治彦は机へ短筒を置いた。

「まだ量産段階ではありません。」

「ですが騎兵による試験では極めて良好な結果です。」

結城が笑う。

「軽騎馬隊では好評です。」

「長筒で初撃を放ち、接近後は短筒へ持ち替える。」

「馬上でも扱いやすく、騎兵の戦い方が変わりました。」

宇都宮も頷く。

「重騎馬隊でも指揮官用としては有用でしょう。」

次に軍制である。

宇都宮は重騎馬隊を率い、武田旧騎馬隊の技を取り入れながら槍と複合弓の運用を磨いていた。

結城は軽騎馬隊で長筒と短筒を組み合わせた新戦術を研究している。

真壁、笠間、宍戸、小山の四将は銃盾隊をそれぞれ率い、前進築城や陣地転換を繰り返し演習していた。

大掾親子は兵站隊と予備兵の再編を終え、補給の標準化を進めている。

水戸頼治の水戸番衆は街道ごとの伝令網を整え、以前より遥かに早く各地へ命令が届くようになった。

鹿島政道は海軍を率い、坂東ガレオンの改良と潮来・鹿島両港の整備を着々と進めている。

氏治は静かに頷いた。

「よく進んでいる。」

「だが。」

蜈蚣切を机へ置く。

「まだ足りぬ。」

諸将が顔を上げた。

「狙撃衆。」

「攻城衆。」

「この二つはまだ形になっておらぬ。」

治彦も頷く。

「長筒は完成しました。」

「だからこそ、それを極める兵が必要です。」

「百人の中で百発百中を競う者。」

「遠距離から敵将や鉄砲隊だけを討つ者。」

「そうした狙撃衆を兵学館で育てます。」

宍戸も続く。

「攻城衆も同様です。」

「築城だけではなく、臼砲、爆薬、坑道、架橋、土木を専門とする兵を育てます。」

「一朝一夕ではできません。」

「五年かけて整えましょう。」

氏治は大きく頷いた。

「焦る必要はない。」

「坂東五カ年計画とは、五年かけて国を変える計画だ。」

「一年で完成させるものではない。」

そして最後に氏治は評定の間を見渡した。

「半年前。」

「我らは武田との戦を終えたばかりだった。」

「今は違う。」

「戦うためだけではなく、国を育てる軍へ変わり始めている。」

武田旧臣も坂東の諸将も静かに頷いた。

半年という短い時間で、坂東は確かに変わっていた。

新しい兵器。

新しい軍制。

新しい人材。

そして、新しい時代。

坂東五カ年計画は、誰もが予想した以上の速度で、その第一歩を刻み始めていた。

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