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試合後の玄武弁当

試合終了の合図とともに、夕刻の馬庭球場は大きな拍手に包まれた。

勝敗よりも、笑顔が残る試合だった。

朝基はあえて指揮を執らず、一年生が活躍できるよう陰で支え続けた。

赤井は一人ひとりへ声を掛け、自分で考える楽しさを伝えていた。

そのおかげで、試合前に玄武へ抱いていた「怖い」「近寄りがたい」という印象は、すっかり薄れていた。

試合が終わるや否や、一年生や見学していた生徒たちが一斉に駆け寄る。

「朝基先輩!」

「さっきの動き、どうやるんですか!」

「今度、自分も教えてください!」

「赤井先輩!」

「質問の仕方がすごく分かりやすかったです!」

「また一緒にやりたいです!」

気が付けば、朝基と赤井は完全にもみくちゃになっていた。

「順番に!」

「押さないでください!」

「一人ずつ聞きますから!」

朝基は笑いながら応え、赤井も苦笑しつつ一人ひとりの質問へ耳を傾ける。

氏治はその様子を見て笑った。

「さっきまで誰も試合へ出たがらなかったというのに。」

治彦も頷く。

「玄武の狙いどおりですね。」

「恐れられるより、憧れられる方が人は集まります。」

やがて人混みが落ち着く頃には、空も少しずつ茜色へ染まり始めていた。

宇都宮朝綱が静かに手を打つ。

「皆さん。」

「そろそろ夕餉にしましょう。」

「今日は朱雀寮の大食堂を開放します。」

兵学館中から人が集まりすぎたため、各寮の食堂では入り切らない。

朱雀寮自慢の大食堂へ全員が移動すると、そこにはすでに弁当が山のように積まれていた。

大掾幹康が満面の笑みで迎える。

「お待たせしました!」

「今日は青龍寮が用意しました!」

氏治は驚く。

「いつの間に。」

鹿島道征が帳面を閉じながら笑う。

「玄武の練習試合を見に人が集まると思いまして。」

「見物人向けに弁当を売っていたんです。」

「おかげさまで大繁盛でした。」

大掾は弁当の蓋を開ける。

「本日の名物。」

「忍び豚飯・玄武弁当です!」

白い飯の上には、味噌で黒く照りの出た豚肉。

さらに、ご飯を割ると、その間にも豚肉が隠れている。

「味噌で黒くなった豚肉が、ご飯の間へ忍ぶ。」

「玄武の黒にも掛けました。」

「それに豚は『ブーブー』と鳴きますからね。」

大食堂は笑い声に包まれた。

「また駄洒落か!」

「青龍らしい!」

朝基も思わず吹き出す。

「名前はともかく、おいしそうですね。」

「名前も味も売れる条件です!」

大掾は胸を張る。

こうして四寮の生徒たちは一つの食堂へ集まり、肩を並べて玄武弁当を頬張る。

つい先ほどまで敵味方に分かれていた者たちが、今は同じ卓を囲み、試合の話で笑い合っていた。

兵学館の夏の夕暮れは、賑やかな笑い声と味噌の香りに包まれながら、更けていくのであった。

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