玄武寮の寮行事
朝基は地図と調査票を見比べると、大きく頷いた。
「今日の成果をまとめます。」
玄武寮生たちが自然と輪になった。
朝基は筆を走らせる。
霞ヶ浦南丘遺跡 第一次調査報告
・半ば腐食した丸木舟を確認。
・海産と思われる貝殻を多数確認。
・藻塩を煮詰めた可能性のある土器を確認。
・現時点では土浦一帯が古く海、または海と川が混じる入り江であった可能性は高い。
・ただし、いずれも決定的証拠ではない。
・広範囲の地層調査、他遺跡との比較調査を継続する。
朝基は巻物を閉じた。
「今日分かったことはここまでです。」
「結論は出しません。」
「ですが、次に何を調べれば良いかは分かりました。」
玄武寮生たちは満足そうに頷いた。
「この遺跡は整理します。」
「掘った場所は埋め戻してください。」
「杭は残し、地図へ正確に記録。」
「次回は西側の丘と北の湿地、それから東岸の遺跡も調査します。」
「今日の記録は必ず清書してください。」
「はい!」
全員が手際よく穴を埋め戻し、道具を片付け始める。
遺跡を荒らさぬよう土を戻し、杭だけを残して元の景色へ近づけていく。
その様子を見た氏治は感心した。
「掘るだけではないのだな。」
朝基は微笑む。
「研究は次の人へ残さなければ意味がありません。」
「だから記録し、整理し、元へ戻します。」
やがて片付けが終わると、朝基は手を叩いた。
「よし!」
「今日の寮行事は終了です!」
玄武寮生たちから拍手が起こる。
すると朝基は、先ほどまでの真面目な表情を崩し、いたずらっぽく笑った。
「では。」
「早く兵学館へ戻りましょう。」
「今日は皆で馬庭球をやります!」
「やったー!」
「待ってました!」
「今日は寮長を倒します!」
先ほどまで土器や地層を巡って激論を交わしていた玄武寮生たちは、子どものような笑顔で馬へ飛び乗る。
治彦は思わず笑った。
「切り替えが早いですね。」
朝基も笑う。
「考える時は徹底的に考える。」
「遊ぶ時は徹底的に遊ぶ。」
「それが玄武です。」
氏治は笑いながら馬へまたがった。
「よし。」
「私も付き合おう。」
こうして玄武寮一行は、霞ヶ浦の丘を後にし、笑い声を響かせながら兵学館の馬庭球場へと駆けていった。




