白虎寮での語らい
夕餉の時間になると、白虎寮生たちは自然と食堂へ集まってきた。
午後は思い思いに過ごしていた者たちだったが、夕食だけは皆で囲む。
それが白虎寮の決まりだった。
長机には焼いた豚肉、羊の煮込み、鴨料理、芋や根菜、麦飯が並ぶ。
武術や馬庭球で一日中身体を動かす白虎寮らしく、食卓には自然と肉料理が多い。
「いただきます!」
威勢のよい声が食堂へ響く。
先ほどまで柔術や相撲で組み合っていた者同士が笑いながら料理を取り分け、馬庭球の失敗を笑い合っている。
氏治も大掾政景と並んで席に着き、その賑やかな様子を静かに眺めていた。
「実に良い食事だ。」
氏治がそう言うと、小山義広は照れくさそうに笑った。
「身体を動かす者ばかりですので、自然とこうなりました。」
やがて夕餉が終わり、生徒たちは食器を片付け始める。
小山は氏治へ向き直った。
「殿、もしよろしければ白虎寮をご案内します。」
「うむ。」
氏治は頷いた。
小山を先頭に、大掾政景と治彦も後へ続く。
白虎寮は兵学館の武器庫、その地下に造られている。
石造りの階段を下りると、そこには武器庫とは思えぬ広い空間が広がっていた。
寮室。
自習室。
談話室。
工房。
そして武術愛好会が使う、からくり仕掛けの教室。
昼間まで賑わっていた場所は、今は静かな灯りだけがともっている。
「地下とは思えぬな。」
氏治が感心すると、小山は微笑んだ。
「武器を守るには地下が一番安全です。」
「そのついでに、人も育てようと考えました。」
一通り見て回ると、小山は談話室へ氏治たちを案内した。
机の上には茶が用意され、皆が腰を下ろす。
静かな時間が流れる。
氏治は湯飲みを手に取り、小山を見つめた。
「義広。」
「今日は一日、お前たちの暮らしを見せてもらった。」
「そこで、どうしても聞きたいことが二つある。」
小山は静かに姿勢を正した。
「はい、殿。」
氏治は穏やかに笑う。
「まず一つ目だ。」
「お前は、なぜ白虎寮をこのような形で作ろうと思った。」
談話室の空気が静かに引き締まり、小山義広はゆっくりと口を開こうとしていた。




