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白虎寮の実戦稽古

まず、タイトルはこの内容ならシンプルにこちらが合うと思います。

ライティング

白虎寮の実戦稽古

「ここまでが基本稽古です。」

受け身、形稽古、そして白虎の理念を説明し終えた小山義広は、静かに教室を見渡した。

「武術は形だけでは終わりません。」

「相手は思いどおりには動かない。」

「だから最後は、必ず実戦で確かめます。」

そう言って手を打つ。

「教室、展開。」

からくりが静かに動き始める。

床から仕切りがせり上がり、一つだった教室は四つの試合場へと姿を変えた。

「第一試合場。」

「第二試合場。」

「第三試合場。」

「第四試合場。」

「始め!」

四か所で同時に試合が始まる。

新一年生は基本的に見学。

武術経験のある者だけが上級生の許可を得て試合へ参加する。

投げ。

崩し。

足払い。

押し合い。

受け身の音が教室中へ響き渡る。

小山義広と四人の実力者は各試合場を巡り、審判を務めながら助言を送る。

「腰が浮いている。」

「肩へ力を入れるな。」

「身体の中心で投げろ。」

「今の崩しは良い。」

勝敗よりも、一つでも多く学ぶことが、この稽古の目的だった。

一刻ほど実戦稽古が続くと、小山が中央へ立つ。

「整列!」

四つの試合場から生徒たちが集まる。

「最後は白虎恒例。」

「三十人抜きだ。」

教室がどっと沸く。

実力者が一人ずつ中央へ立ち、挑戦者は休みなく入れ替わる。

礼をする時間はない。

倒れれば次。

「一本!」

「次!」

「一本!」

「次!」

二十人を超える頃には、さすがの実力者も汗が流れ始める。

疲れた相手へ容赦なく挑む。

それもまた実戦である。

「遠慮するな!」

小山の声が響く。

「疲れたから待ってくれと言って、敵は待つか!」

「好機と思えば襲いかかってくる!」

「だから今こそ倒しにいけ!」

挑戦者たちは一斉に踏み込む。

崩される。

投げられる。

それでも実力者たちは体幹だけは崩さず、最後の意地で投げ返す。

四人が三十人抜きを終えると、大きな拍手が起こった。

そして最後に、小山義広が前へ出る。

「締めは私だ。」

三十人抜きが始まる。

二十人を越え、汗が道着を濡らす。

最後、三十人目として歩み出たのは、副寮長・那須資忠だった。

長身でがっしりとした体格。

勝負どころを逃さない胆力。

兵学館でも小山と並び称される白虎寮の両輪である。

小山は苦笑する。

「資忠。」

「最初から三十人目を狙っていただろ。」

那須も笑みを返した。

「一番疲れたところを攻めるのも実戦です。」

二人は静かに構える。

袖を狙い、切り、かわす。

肩がぶつかり、頭が触れ、足払いを掛け合う。

派手な技は出ない。

しかし、一瞬たりとも気の抜けない攻防が続く。

やがて那須が小山の袖をつかみ、一気に引き込んだ。

誰もが勝負ありと思った。

しかし小山は逆らわない。

引かれる力をそのまま利用し、一歩深く踏み込む。

身体の中心が静かに回る。

那須の身体がふわりと宙へ浮いた。

「一本!」

歓声が教室を揺らす。

那須は立ち上がると笑った。

「読んでいましたね。」

小山は首を横に振る。

「いや。」

「頭で考えたんじゃない。」

「手や足で考えた。」

「何千回と繰り返した形が、勝手に身体を動かしただけだ。」

那須は静かに頷いた。

「……まだまだですね。」

二人は礼を交わす。

小山は振り返り、穏やかな表情で言った。

「整列。」

白虎寮生たちは一瞬で列を作る。

「本日の実戦稽古は、これまで。」

そう締めくくったものの、教室のあちこちでは興奮した生徒たちが最後の一番を語り合っていた。

「あの返しを見たか。」

「副寮長が宙に浮いたぞ。」

「引く力を利用したんだ。」

誰一人、その熱気はすぐには冷めそうになかった。

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