表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
117/1005

白虎寮の武術愛好会

「兵学館で決闘が始まる!」

その知らせを聞いた氏治は、治彦、大掾政景とともに兵学館へ足を運んだ。

空き教室へ入ると、そこには大勢の生徒が集まっていた。

中央に立っていたのは、小山義広。

「決闘ではありますが、ご安心ください。」

「今日は武術愛好会の発表の日です。」

氏治は周囲を見回した。

「白虎寮の者ばかりではないか。」

「はい。」

小山は頷く。

「白虎寮は全員参加です。」

「考えることが好きな者ほど、あえて考えない時間を作る。」

「それが白虎の教育方針です。」

「武術は、身体を鍛えるだけでなく、頭を休ませる時間でもあります。」

そう言うと、小山は教室の中央へ立った。

「まずは普段の稽古をご覧ください。」

白虎寮生たちは整列し、一斉に身体をほぐし始めた。

前転を繰り返し、受け身を取り、後ろへ倒れては反動を使って素早く立ち上がる。

中には仲間に勢いよく突き飛ばされ、そのまま宙返りをして着地する者もいた。

「おお……。」

思わず氏治が声を漏らす。

小山は苦笑した。

「あれは高度な技です。」

「まだできる者はごくわずかしかおりません。」

一通り身体を温めると、小山は氏治へ向き直った。

「殿。」

「せっかくですので、ご見学だけではもったいありません。」

「普段どおり、一緒に稽古をお願いいたします。」

その瞬間、白虎寮生たちが一斉に拍手を始めた。

「殿もぜひ!」

「ご一緒に!」

教室中の期待の視線に囲まれ、氏治は苦笑する。

「……これは断れぬな。」

治彦も笑いながら肩をすくめた。

「もう白虎寮生ですね。」

氏治も笑って前へ出る。

まずは前転。

受け身。

そして後ろ受け身からの立ち上がり。

続いて二人一組となり、小山が一つの投げ技をゆっくりと実演した。

「腕では投げません。」

「身体の中心を使います。」

「形だけを覚えてください。」

初心者は上級生と組み、力を入れずに同じ動きを何度も繰り返す。

形が整ってきたところで、少しずつ本当に相手を崩し、受け身を取りながら投げる。

失敗しても誰も笑わない。

できた者ができない者へ教え、何度でも繰り返す。

稽古が一段落すると、小山は静かに口を開いた。

「白虎が武術を学ぶ理由は、勝つためだけではありません。」

「刀が折れても。」

「槍を失っても。」

「矢が尽きても。」

「なお生き残るためです。」

人体図を広げながら続ける。

「白虎は闇雲には鍛えません。」

「骨格や関節、身体の仕組みを学び、人体力学に基づいて最も効率よく身体を使うことを目指します。」

「だから一年目は柔術。」

「二年目は華南武術の打撃。」

「三年目からは、それらを合わせた総合術へ進みます。」

そして最後に、小山は静かに拳を握った。

「白虎の合言葉があります。」

「力と気持ちは、一緒。」

「どれほど力があっても、使わなければ意味がありません。」

「どれほど思いがあっても、伝えなければ意味がありません。」

「だから白虎は、正直であることを大切にします。」

教室は静まり返る。

氏治はゆっくりと頷いた。

「よい教えだ。」

「武だけでなく、人としての在り方も学んでいるのだな。」

小山は深く一礼した。

「ありがとうございます。」

そして顔を上げると、にやりと笑った。

「では殿。」

「理念のお話はここまでです。」

「次は、いつもどおりの実戦稽古をご覧いただきましょう。」

その一言に、教室の空気は再び張り詰めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ