青龍の稼ぎ時
青龍の稼ぎ時
翌朝、潮来の蔵屋敷は日の出とともに動き始めた。
大掾政景は宝篋の甲板に寮生たちを集める。
「本日は総力戦だ。」
「筑波と宝篋、二隻とも鹿島へ向かう。」
「目的は一つ。」
「牛革の買い付けだ。」
寮生たちは一斉に頷いた。
氏治が首を傾げる。
「それほど急ぐ理由があるのか。」
大掾は笑みを浮かべた。
「はい、殿。」
「現在、土浦では殿の特例により、坂東楯の生産を急いでおります。」
「盾には大量の牛革が必要です。」
「今なら、いくら仕入れても高く買い取っていただけます。」
「つまり……。」
「今が稼ぎ時なのです。」
「なるほど。」
氏治も納得して頷いた。
二隻は朝日を受けながら鹿島へ向けて出航した。
鹿島では荷が届くや否や、牛革が次々と積み込まれていく。
「急げ!」
「次の便を出すぞ!」
船倉がいっぱいになると、すぐに潮来へ引き返す。
荷を降ろすと再び鹿島へ向かう。
その日、筑波と宝篋は何度も霞ヶ浦と鹿島を往復した。
船着場では荷役方が汗を流し、牛革を蔵へ運び込んでいく。
昼になっても。
午後になっても。
船は止まらない。
夕暮れになってようやく最後の便が潮来へ戻る頃には、蔵屋敷は牛革で埋め尽くされていた。
「もう入らないぞ!」
「二階へ運べ!」
「いや、隣の蔵も使おう!」
寮生たちは笑いながら最後の荷を運び込む。
大掾は満足そうに蔵を見渡した。
「よし。」
「これだけあれば十分だ。」
夕方、全員が宝篋の甲板へ集まる。
大掾は帳簿を閉じると、寮生たちへ告げた。
「明日の朝。」
「この牛革を積み、土浦へ向かう。」
「土浦で盾用の革として納品する。」
寮生たちは静かに耳を傾ける。
大掾は少し笑みを浮かべた。
「そして、その売り上げは。」
「皆で分ける。」
甲板から歓声が上がった。
「やった!」
「頑張った甲斐があった!」
「さらに。」
大掾は続ける。
「納品が終われば、一週間は自由行動だ。」
「土浦で買い物をするもよし。」
「家へ帰るもよし。」
「友と遊ぶもよし。」
「ただし、一週間後には必ず龍宮館へ集合すること。」
「はい!」
力強い返事が夕暮れの潮来に響いた。
牛革でいっぱいになった蔵を背に、寮生たちは一週間の自由を思い浮かべながら、翌朝の土浦行きを楽しみにするのであった。




