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後半、狩る者たち

短い法螺貝が霞ヶ浦の湖畔に響き渡った。

十五分の中休みが終わる。

朱雀寮の六騎は再び馬上へ戻った。

汗は拭ったものの、肩は重く、馬の鼻息も荒い。

前半を走り続けた疲労は隠せなかった。

宇都宮朝綱は木槍を掲げる。

「最後まで崩れるな。」

「教えどおりに戦うぞ。」

六騎は力強く頷いた。

一方、玄武寮。

結城朝基は前半最後に走り続けた三騎を下げ、新たな三騎を前へ出す。

交代した三人は汗を流しながら静かに観戦席へ回る。

代わった三人はまるで今から試合が始まるかのように余力十分だった。

朝基は競技場を見渡す。

ただ一言。

「始める。」

法螺貝。

後半開始。

朱雀寮の攻撃から始まる。

朝綱が中央の鞠を軽く味方へ送る。

朱雀はいつもどおり、美しい隊列で前へ進み始めた。

しかし――

氏治はすぐに違和感を覚えた。

「……玄武が下がらぬ。」

前半は一騎だけが鞠を追い、五騎は自陣へ退いていた。

だが今は違う。

朝基が短く指笛を鳴らす。

高く澄んだ音が湖面へ響いた。

その瞬間、玄武寮は二騎ずつ三組に分かれ、一斉に動き出す。

鞠を持つ朱雀の騎手へ二騎が襲い掛かった。

一騎が正面を塞ぐ。

もう一騎が横から馬体を寄せる。

逃げ道を奪う。

「離れろ!」

朝綱の声が飛ぶ。

しかし遅い。

ドォン!

馬体同士が激しくぶつかった。

朱雀の騎手は鞍の上で大きく体勢を崩し、そのまま馬ごと横へ弾き飛ばされる。

砂煙が舞い上がる。

観客席から悲鳴が上がった。

「危ない!」

「落ちた!」

だが審判は旗を動かさない。

馬への故意の打撃ではない。

馬体同士の接触は認められている。

試合は続行。

転倒した騎手が立ち上がる頃には、玄武はすでに鞠を奪っていた。

「替われ。」

朝基の声。

鞠を持つ玄武の騎手が前へ出る。

その横を二騎が並走し、盾となる。

さらに後ろから別の二騎が追い越し、新たな攻撃へ備える。

一組が離れれば、次の一組。

また次の一組。

休む暇もない。

朱雀は鞠を渡す。

その受け手にも二騎。

また渡す。

そこにも二騎。

どこへ逃げても玄武が二人一組で襲い掛かる。

「何だ、あの動きは!」

観客席は騒然となった。

前半の玄武とはまるで別の軍勢だった。

やがて朱雀の隊列が乱れ始める。

一騎が弾き飛ばされる。

救援へ向かった二騎も進路を塞がれる。

気付けば朱雀の六騎は互いの位置を見失い、それぞれが孤立していた。

「今。」

朝基が木槍を軽く上げる。

その一言だけで玄武が動く。

孤立した一騎から鞠を奪う。

三本。

四本。

無駄のない短い連携。

最後は前衛が網囲いへ流し込む。

三点目。

歓声が響く。

しかし玄武は止まらない。

再開。

また二騎が襲う。

また朱雀が崩れる。

四点目。

五点目。

試合は、もはや一方的だった。

黒い陣羽織は獲物を追い詰める狼の群れのように朱雀を追い回し、朱雀は隊列を組み直す暇さえ与えられない。

観客席では誰もが息を呑んでいた。

「……これは練習試合なのか。」

白虎寮の小山義広だけが静かに呟く。

「玄武は勝ちに来たのではない。」

「兵学館中へ示しているのです。」

「玄武と戦えば、こうなると。」

最後の得点。

朝基は自ら決めようとはしなかった。

木槍で軽く味方へ送る。

前衛がそれを押し込み、六点目。

法螺貝が長く鳴り響く。

試合終了。

六対〇。

兵学館では三点差が付けば勝負ありと言われる。

それほど一点の価値が重い。

それにもかかわらず六対〇。

しかも後半だけで四得点。

観客席はしばらく静まり返り、やがて大歓声が霞ヶ浦の湖畔を揺らした。

この日、兵学館最強の名は、誰の目にも疑いようのないものとなった。

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