第32.5話 通話
『……どちら様かしら?』
「美咲から聞いたでしょ。美咲とそっちに行く人よ」
『そのそっちに行く人が、どちら様か聞いているのだけれども』
「いや、だから! 同行者だってば!」
『……』
「……聞いてんの?」
『ごめんなさい。続きがあると思ったわ』
「は? どういう意味よ」
『……そうね。わかりやすく聞くわ。貴女の身分を証明してくれないかしら』
「それに何の意味があるの?」
『美咲の同行者として、信用に値するかを判断するわ』
「なにそれ、失礼すぎない? いたって普通のプレイヤーなんですけど」
『必要なことよ。こちらに来る相手を、表示名だけを見て通すわけにはいかないもの。答えられないと言うのなら、同行は許可できないわ』
「……ナナ、IDはNana.Fortune」
『Nana.Fortune、ね』
「復唱しないでくれない?」
『……』
「……」
『……確認が取れたわ。犯罪フラグなし。赤ネーム履歴なし。過去の迷惑行為ログもなし。少なくとも、問題のあるプレイヤーではないようね』
「だから、そう言ってんじゃん」
『自己申告だけなら、判断材料として不十分よ』
「で、私が善良って確認とれたんでしょ。行ってもいいわね」
『まだよ』
「……っ。しっつこいな! 今度はなに!?」
『同行する理由をまだ聞いていないわ』
「美咲が心配だからよ!」
『心配……貴女が?』
「そうよ悪い? このゲームで初心者相手に好き好んで世話を焼く奴は、裏があるか、よっぽどのお人よしなの。あんたがどっちなのか、私が見定めに行くから」
『……そう。貴女も、ずいぶん世話焼きなのね』
「わ、私は違うから! ったく、首を洗って待ってなさいよ」




