第5話 気ままな街
門をくぐって、石畳を数歩進んだところで、美咲は声をかけられた。
「ようこそリヴェラへ。クエスト受注は正面です。左手に商店街、右手にフリーマーケットとなります」
小柄な青年が、笑顔で案内をしてくれた。
17、18歳くらいの、清潔感ある少年風。姿勢が良く、言葉は丁寧で、笑顔が崩れない。
「えっ……あ、ありがとうございます」
美咲は、慌てて頭を下げた。
(……親切な人だなぁ)
彼女はそう思いながら、案内されたとおりに商店街へと歩き出す。
左手に入ると、通りの空気が変わった。
看板が突き出し、布の庇が重なり、ネオンがぎらつく。手書きのポップが店先で揺れ、入口では誰かが腰を下ろして何かを食べていた。頭上にはホログラム広告。荷物を運ぶドローンが、その下を忙しなく横切っていく。
そしてそのすべての中を、数えきれない人たちが行き交っていた。
「わぁ……」
美咲は、ゲームの街という場所に触れた気がして、思わず声を漏らした。
まず目に入ったのは、銃のマークが付いたお店。
《武装商会 アイアン・ドッグ》
ドアを開けると、鈴の音ではなく、カツッという金属音が鳴った。
それと同時に、どこかやる気のない声が迎える。
「らっしゃせ〜」
美咲は声の先に視線を向ける。
カウンターで頬杖をついた女性が、気だるそうに端末を眺めている。
(……えらく覇気がないな)
だが、中は圧巻だった。
壁一面に並ぶ銃器。ショーケースに入った無数のパーツ。カスタムモデル、限定品、設計図、補助AI装置──。
「お、おおおお……」
美咲は目の前の光景に目を丸くする。
とりあえず、自分が使っている銃を確認する。
【MP-5】
サブマシンガン。
取り回しやすく、初心者にも向いているらしい。
「サブマシンガンって、他にはどんなのがあるんだろう……」
その瞬間、カウンターから再びあの覇気のない声が響く。
「SMGは端だよ〜」
「あっ、はい! ありがとうございます!」
元気に返事をして、教えられた方向へと向かう。
言われた通り、棚の端には同じカテゴリの銃が並んでいた。
S&W M76。
スコーピオン EVO3。
H&K UMP。
85式微声冲鋒槍。
「……全然わからない」
読み方すら怪しい名前。
見た目は似たり寄ったり。
しかも“PDW”という、よく分からないカテゴリまで混ざっている。
(サブマシンガンとPDWって、何が違うの?)
美咲は並べられた武器を交互に見比べて、考えるのをやめた。というより、考えても分からなかった。
「……また今度にしよ」
店を出ることにした。
ドアの金属音とともに、さっきと同じ声が背中に飛んでくる。
「あざっした〜」
美咲は苦笑いを浮かべながら、扉を閉めた。
武器屋を出た美咲は、すぐ近くにあった雑貨屋に向かった。
(雑貨なら……もう少しわかるかも)
店名は《にじいろパウダー》。木目調の外壁に、手描きのウサギのイラスト。《日用雑貨あります♡》
これは──かわいい雑貨屋に違いない。
美咲は小さく頷くと、ドアノブに手をかけた。




