第2話 ずれた輪郭
アバター設定を終えた美咲は、ゆっくりとホログラムに手を伸ばした。
指が止まる。
美咲はホログラムを見つめ、開始ボタンに触れる。
一瞬、視界が乱れ、赤い警告文が浮かぶ。
【感覚同期に異常を検出】
だが、それはすぐに消えていった。
白い空間が、色づいていく。景色が、風を運ぶ。匂いも、音も、手触りも──現実と変わらないほど精密に再現された、もうひとつの世界が美咲を包んでいた。
ただ、立っているはずなのに、自分の輪郭が半歩ずれているような感覚があった。ほんの少し前まで、浮いていたような感覚だったのに。今はしっかりと、地面に足がついている。
美咲は体を捻り、自身の体に視線を落とした。
腰のポーチには黒い銃。腕には時計のような機械。銃の名前も、腕の機械の用途も分からない。
【チュートリアルを開始しますか?】
【はい】
現実では教わることのない知識を、次々と体験する。
そして、最後に表示されたのは──
【武器を選択してください】
美咲は一覧を眺めた。
種類は多い。
アサルトライフル。スナイパーライフル。ショットガン……。
美咲の目が、サブマシンガンに止まる。
「……んー……これでいいや」
装備が完了した瞬間、視界が再び歪み、元の森へと転送された。
それ以降、システムは沈黙した。
美咲はサブマシンガンを構えてみる。
重量感が、腕を伝う。
一通り眺めた後、美咲は小さく笑った。
そして、それをベルトで肩から吊るす。
美咲は思い出したかのように顔を上げ、辺りを見渡す。
「……どうしよう」
迷った末、とりあえず歩き始める。
少し重たい体をゆっくり動かしながら、草を踏みしめ、木々の間を抜けていく。
それだけで、心が少しだけ軽くなった気がした。
風が頬を撫でる。
鳥が枝を跳ね、木々がざわめく。
思わず、美咲は口元を緩める。
その時だった。
キイイイイン……ッ
金属が擦れるような、尖った音が空気を裂いた。




