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第17話 約束

 美咲と刹那がアリスを見送ると、横から声が響いてきた。


「青春やなぁ〜っ!」


 泣き真似をしながら、レイナがいつの間にか美咲の隣に立っていた。


「びっくりした……!」


 会計を済ませたアリスが見えなくなった後、刹那がふと思い出したように言う。


「そういえば……どうしてあんな危ないとこにいたんだ?」


「え?」


「お前、あのマップの推奨より7は下だろ?」


 美咲は視線をさまよわせ、苦笑いを浮かべて小さく頷いた。


「えっと……その、帽子が欲しくて……」


 帽子。


 目標の金額に、あと少しで届く。


 それだけで、無理をするには十分だった。


「……しょうもな」


 刹那が半目で美咲を見つめ、あっさりと言い捨てる。


「し、しかしですね! クエスト自体は余裕でしたし!」


「でも死にかけたんだろ? 死んだら全部おじゃん」


「あいつが来なかったら、クエストも、金策も、時間も、全部台無しだったぞ」


 刹那の言葉は厳しい。


 けれど、それは正しさの裏返しだった。


「はい……改めます……」


 美咲は肩を落とす。


 そんな縮こまった美咲を見て、刹那は小さく溜め息をついた。


「まあ、その根性は……認めてやるけどな」


「っ……!」


 顔を上げた美咲は、まるで褒められた子犬のように笑った。


「それで? えーっと……6万だったか? 届いたのか?」


「えっと、報酬をもらって、残り6000キャッシュです」


「そっか。じゃあ明日、残り6000分付き合ってやるよ」


「えっ!? い、いえっ、そんな……申し訳ないですよ!」


 美咲は慌てて手を振る。


 だがその顔は、照れているようにも、嬉しそうにも見えた。


 刹那は手を振り、口を開いた。


「気にすんな。……また無理して死なれたら後味悪いし」


「今日助けた時間も労力も、全部無駄になる。それが嫌なだけ」


「……」


 美咲は少しだけ悩んで、けれどすぐに小さく笑った。


「ありがとうございます!」


 刹那が小さく笑う。


「ああ。先駆者の──」


 刹那が言いかけた言葉を、美咲が勢いよく引き継いだ。


「言うことは素直に受け取るもの!」


 それは、今日命を救ってくれた少女の口から出た言葉だった。


 その場にいない彼女を思い出して、ふたりは思わず声を上げて笑った。


「じゃあ、私も帰るわ。……また明日」


 刹那は立ち上がり、手を上げる。


 そして、思い出したように口を開いた。


「あ、そうだ。フレンド登録、しとくか。忘れる前にな」


「……フレンド……登録?」


 美咲の頭に、疑問符が浮かんだ。


 刹那が眉をひそめる。


「え?」


「……フレンド登録って、なんですか?」


「……は? お前、始めて何週間だよ?」


「そろそろ……3週間、です……」


 刹那は一瞬あんぐりと口を開け、後頭部をかいて笑った。


「いや、私も人のこと言えないけどさ……友達作れ」


 そんなやり取りのあと、フレンドリストの開き方を教わり、ようやく美咲の画面に、ひとつだけ名前が追加される。


 SETSUNA


 その文字が表示された瞬間、美咲の胸の奥が、温かくなった。


 初めての、フレンド。


 ふたりはレジへと向かう。


「カエデさーん、お会計お願い」


 カウンターの奥から、静かに歩いてきたのは──黒髪ロングに和装の、美しい女性だった。


「お会計なら先ほど、アリスさんが済ませましたよ」


「……あいつ……カッコつけやがって……」


 刹那は苦笑混じりに呟くと、美咲に視線を向ける。


「今度会ったら礼言っとけよ?」


「はい!」


 美咲は力強く頷いた。


 帰り際、カエデが優しい笑みを浮かべて美咲に声をかける。


「……あの子たち、不器用ですけど、いい子たちなんです。仲良くしてあげてくださいね」


 そう言って、丁寧に頭を下げた。


「わ、わたしもですっ!」


 ──何が「わたしも」なのか、自分でも分からなかったけれど。


 美咲は勢いで言っていた。


 その言葉に、カエデは優しく微笑む。


「ふふ……また来てくださいね」


「お邪魔しました。美味しかったです!」


 そう言い、慌てて店を出た美咲の背を、静かな風が追いかける。


 店の奥、レイナがカウンターに寄りかかりながらぽつりと漏らした。


「……あの子、2人にいい影響を与えてくれるかもなぁ」


 カエデはその言葉に、少しだけ目を細めた。


「……そうですね。私も、そんな気がします」

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