第42.5話 休憩室にて
同じ頃、スタッフ休憩室。
リリアは椅子へ腰を下ろし、手元のタブレット端末をじっと見つめていた。
画面に表示されているのは、Code:VIR公式配信ページ。
先ほど行われた太郎とイオの試合が、ハイライト映像として流れている。
その横に並ぶ視聴者数。
1万を優に超えていた。
さらにコメント欄では、文字が下から上へ途切れることなく流れ続けている。
リリアの口元が、だらしなく緩んだ。
「嬉しそうですね」
「……へ?」
声に顔を上げる。
開いた扉の向こうには、しろ。
その隣には、今大会の発起人である男性プレイヤーが立っていた。
二人が室内へ入り、しろが静かに扉を閉める。
リリアの正面へ腰を下ろしたところで、彼女は待ってましたと言わんばかりにタブレットを二人へ向けた。
「見てください、この数字と反応!」
二人が画面を覗き込む。
「……大盛り上がりですねぇ」
しろが思わず声を漏らす。
「でしょー? 運営に持ち込んだ甲斐がありましたよ!」
リリアは得意げに胸を張った。
「まあ、この方が首を縦に振ってくれなかったら、始まりませんでしたけどね」
「いやいや」
男が苦笑しながら手を振る。
「急にリリアさんが来た時はびっくりしましたけど、俺は好きにどうぞって言っただけなんで」
「でも、やってよかったでしょ?」
「それは、まあ」
男はもう一度、配信画面へ目を向けた。
「最初は、16人ちゃんと集まるのかなって心配してたんですけどね。まさか、こんなことになるとは」
「ここまでランカーが集まる大会なんて、ランキング戦くらいですからね」
しろも、自分の端末へ参加者一覧を表示する。
そして、そんな大会も残すところ決勝戦だけ。
リリアは流れ続けるコメントを眺めながら、小さく笑った。
「この大会を見て、もっといろんな人にCode:VIRへ興味を持ってもらえたら嬉しいですね」
「じゃあ、そのためにも最後までしっかり盛り上げないといけませんね」
「よっしゃー!」
リリアが勢いよく立ち上がる。
「決勝戦も、気張って盛り上げましょう!」
「まだ休憩時間、残ってますけど」
しろの声を背中で聞きながら、リリアはもう扉へ向かっていた。
「早めに準備するに越したことはありません!」
そう言い残して、休憩室を飛び出していく。
残された二人が顔を見合わせる。
男が、小さく笑った。
「……楽しそうですね」
「ええ」
しろも笑う。
「本当に」




