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第11話 拾って、作って

 「よし……次は、あれ」


 美咲は草の中で身を低くしたまま、視線をやや前方に送った。


 そこにいたのは──


 蜘蛛とムカデを混ぜたような、鈍く光る金属製の異形。


「……気持ち悪っ……」


 小さく呟いた声は、風に流されていった。


 草の中からそっと出て、銃を構える。


 初期装備でもらったMP-5に、マリアのカスタム。


「いける……いける……近づきすぎなければ……」


 武器がシングルトリガーになっているのを確認する。


 そしてムカデの背後から狙いを定め──引き金を引いた。


 パンッ。


 乾いた音とともに弾が放たれる。


 着弾。


 衝撃が腕を伝うが、反動はマリアのおかげで制御できている。


 銃弾はムカデの右後脚にヒットし、火花を散らした。


 だが、それで終わりではない。


 金属が軋むような、ひどく不快な悲鳴が辺りに響く。


 8本の脚がカシャカシャと動き、異様な速さで美咲に迫ってくる。


「や、やばっ! こわっ……!」


 だが、美咲は逃げなかった。


 再び銃を構える。


 照準をしっかり合わせ狙いを定める。


「……落ち着いて……撃てば、止まる……!」


 再度引き金を引く。


 2発、3発と連続で放つ。


 1発は外れ、1発は胴体にかすり、1発は目のようなセンサーに命中した。


 ギギ、ギギャ──


 ムカデが大きくよろめいた。


 脚が絡まり、姿勢を崩す。


 その隙を逃さず、美咲は接近しながらさらに2発を叩き込む。


 1発は関節、もう1発は──心臓部らしきコアを直撃。


 ギ──……ギギ……


 そのまま、ムカデは崩れ落ちるようにして沈黙した。


「……はぁっ、はぁっ……!」


 息を切らしながら、美咲は端末を取り出す。


「……勝った、のかな……?」


 そこには、撃破ログ。


「この敵、フールって言うんだ……」


 手は汗で少し滑っていた。


 それでも──


「……私、やれた……!」


 戦闘の興奮がまだ残る中、足元のフールを前に、美咲はしゃがみ込む。


「うぅ……やっぱり近くで見ると、より気持ち悪い……」


 無数の脚と、どこが頭かも分からない機械の塊。


 その傍らに、透明なゼリーが落ちていた。


《リーフジェル》


「これ……マリアさんのメモに書いてあった素材……」


 美咲はそれに手を伸ばし、止まった。


 そして、フールを一瞥する。


「……ちょっと触りたくないかも」


 美咲は、リーフジェルを指でつまむ。


 生暖かい感触に顔が歪んだ。


 それをつまんだまま、草むらを抜けて小さな岩陰に座り込む。


「よし……クラフト、やってみよう……!」


 リーフジェルを地面に置き、マリアの店で受け取った簡易クラフトキットをバッグから取り出す。


 クラフト端末を起動する。


 UIが立ち上がり、「医療用 包帯」のレシピが表示される。


【必要素材:リーフジェル×1 精製水×1 繊維布×1 ヒールハーブ×1 スウィートミント×1】


「リーフジェルは……ある、精製水は、マリアさんが持たせてくれた。布も…あった!」


 ポーチから5つのアイテムを並べ、キットの開いた扉の中に入れていく。


 そして──画面に浮かぶ【クラフト開始】のボタンに触れた。


 キットの扉が閉まり、画面に進行度が表示される。


 そのゲージがゆっくりと進んでいく。


 美咲はそれを、じっと見つめた。


 ──


 キットの扉が開いた。


【クラフト成功:医療用 包帯×1】


「できた──っ!」


 美咲は両手でそっと、その包帯を持ち上げた。


 白い布にくるまれた、簡素な包帯。


 少しだけ、薬品のにおいが鼻をついた。


「……なんか、ちょっと苦そうな匂い……でも……」


「やった、私、ちゃんとクラフトできた……!」


 美咲はそれを、大切にバッグに詰め込んだ。


 やがて太陽は落ち始め、影が長く伸びていく。


 今日という日も、そろそろ終わりを告げようとしていた。


 それでも美咲は、ひとり──草の上で、もうひとつクラフトを試そうと材料を並べていた。


 美咲はマリアの微笑む顔と、帽子を思い浮かべながら、開始ボタンに指で触れた。

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