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事務の破壊者

※痛快リーガル・ファンタジーです。

馬車がガタガタ揺れる。


「ちょ、ちょっと優しく扱えよ! 俺、勇者だぞ!?」


「荷物は黙っててください」


ゼクスは鎧が重すぎて――荷台で転がっている。完全に積荷。


そのまま現場へ。


◇◇◇


王都郊外の演習場。


「……これ、か」


地面にはオークの死骸が転がっていた。


だが――違和感。


「……おかしいわね」


私はしゃがみ込む。


「ルルさん、これ見て」


普通なら。


聖剣で斬られた魔物は――浄化されるか、綺麗に断たれる。


でも。


目の前のオークは。


「……ミイラ?」


全身が干からびている。

水分も、魔力も、何もかも抜かれたみたいに。


「……解析します」


ルルが触れる。


沈黙。


そして。


「……逆流……しています」


「逆流?」


「聖剣が……倒したのではなく……」


一拍。


「魔物から魔力を吸収しています」


さらに。


「……その余波で……使用者からも徴収」


「は?」


ゼクスが固まる。


ルルの探知機が赤く点滅した。


ピピピピ。


危険信号。


私はゼクスの腰の剣――

『エクス・キャリバー・ネオ』に触れる。


……冷たい。


なのに。


底なしの空腹みたいな“飢え”だけが伝わってくる。


「ゼクスさん」


「お、おう」


「昨日、振った感覚は?」


「いや……めっちゃ気持ちよかったぞ?

“力が溢れてくる!”って感じで――」


「続けて」


「振るたびに頭がキンキンしてさ。

あれが“ジャックポット”だと思ってた」


「逆です」


一刀両断。


「溢れてたのは――あなたの生命力です」


「……は?」


私は契約書を開く。


魔法の拡大鏡で、極小文字を読む。


「……あった」


第百二十八条。


「“魔力補填は吸収した魔力の九〇%を手数料として徴収”」


「九〇%!?」


「さらに――」


ページをめくる。


「“魔力枯渇時は健康寿命を担保に自動融資”」


沈黙。


「……終わってるわね」


私は額を押さえた。


「これ、金融商品じゃない」


一拍。


「吸血契約よ」


ゼクスの顔が青くなる。


「つまり?」


「振るほど吸われる」


「弱るほど借金が増える」


「逃げたら拘束」


「最終的に――」


私は淡々と告げた。


「あなた本体が商品です」


「ふざけんなぁぁぁ!!」


◇◇◇


「リィンちゃーん!!」


シャロン帰還。


息切れMAX。


「証拠、全部取ってきたわよ!」


パンフレット、録音水晶、謎の冊子。


「聞いてこれ!」


再生。


『勇者様なら実質無料でーす! 光ってますよー! ほらすごいでしょー!』


「……ひどい」


さらに。


「これ見て。マニュアル」


私は目を通す。


そこには。


『ターゲットが“正義”“伝説”に弱い場合、

複利説明は省略し、演出を強化せよ』


「……は?」


『光量を上げるほど判断力は低下する』


「……」


私はゆっくり顔を上げた。


「完全にカモ扱いね」


ゼクスを見る。


目が泳ぐ。


「……ごめん」


「あとで反省文三十枚です」


◇◇◇


状況整理。


借金:六百万枚

現金:足りない

返済:不可能


つまり。


「正規ルートは捨てる」


私は立ち上がる。


眼鏡を押し上げる。


スイッチ入った。


「ルルさん」


「はい」


「この剣、過負荷かけられる?」


「……可能です」


「契約魔力を逆流させれば……」


「いいわね」


次。


「シャロンさん」


「はい!」


「競合――『ルシファー・バンキング』調べて」


「え? なんで銀行?」


私はニヤリと笑う。


「債権は“売れる”からよ」


一拍。


「敵の敵は、最高の買い手」


シャロンの目が輝く。


「……なるほど」


私はゼクスの鎧にベタベタと貼る。


「監査中」


「おいそれやめろ!」


無視。


「いいですか、ゼクスさん」


私は静かに言う。


「あなたが買ったのは聖剣じゃない」


一拍。


「金融爆弾です」


風が吹く。


ミイラ化したオークが転がる。


私は笑った。


「そして――」


「それを爆発させるのが、私の仕事よ」


有給?


遠い。


でもいい。


今は。


「……潰す」

次回に続きます。

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