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勇者と恐怖のリボ払い

※痛快リーガル・ファンタジーです。

エデンの監査まで、あと二日。


――なのに。


事務所は、天国だった。


昨日までの地獄が嘘みたいに、

空気がキラキラしている。


「……潤ってるわね」


原因は一つ。


魔王軍から――もとい、

“正当な手続きで回収した”金貨五十万枚。


この破壊力、えげつない。


「リィンちゃーん!」


シャロンが跳ねてくる。


「見て見てこれ! 『自動追尾型・美肌ミスト噴霧機』!」


シュシュッ、と霧が舞う。


「営業スマイル、三割増しよ!」


「誤差ですね」


「ひどっ!?」


横ではルル。


「リィン……さん……」


新しい機械にしがみついている。


「『超伝導・魔導遠心分離機』……導入完了……」


「ポーションの不純物……コンマ単位で……除去可能……」


「いいですね。まともな投資です」


「……ふふ……勝った……」


その奥。


社長。


高級オフィスチェアに沈み込んでいた。


「ふぅぅぅ……」


「人間工学……最高……」


「社長、よだれ出てます」


「えっ!? うそ!?」


私はというと。


新品の魔導電卓を叩きながら、

高級茶葉の香りを楽しんでいた。


備品更新。


福利厚生改善。


そして――


「これでピートに毎日、

特級魔海鮮を食べさせられるわ」


デスクの下。


丸まっていたピートが顔を上げる。


「ニャーン♪」


(やっと待遇が適正になったね)


「そうよ。遅れてごめんね」


平和。


完璧な平和。


――だったのに。


ガラッ!!


ドアが吹き飛ぶ勢いで開いた。


「よお、みんな!!」


来た。


歩く負債。


「俺の“新しい相棒”が届いたぜ!!」


ゼクスだ。


……そして。


全員、固まった。


「……誰?」


シャロンが素で言った。


そこにいたのは。


昨日までのボロ革鎧の男じゃない。


銀のプレートアーマー。


宝石だらけのマント。


そして――


腰の剣。


鞘から漏れる光だけで、

天井が焼けそうだった。


「……ゼクスさん」


私は静かに聞いた。


「それ、どうしたんですか?」


昨日、渡した金。


あれは“修繕費”。


こんな装備、買えるはずがない。


「これか?」


ゼクスがドヤる。


「聖剣『エクス・キャリバー・ネオ』!」


「それと『バハムート・メイル』!」


「店がよ、俺が勇者だって知ってさ」


「特別な決済方法、提案してくれてな!」


――来た。


嫌なワード。


「……詳しく」


私は笑顔で言った。


「その“特別な決済方法”を説明してください」


「おいおい怖えよリィン」


ゼクスが一枚のカードを取り出す。


紫の紋章。


嫌な予感しかしない。


「これだ!」


「『サタン・クレジット』の――」


一拍。


「『マナ・リボルビング・システム』!」


事務所が凍った。


「……リボ払い?」


「そう! マナ・リボ!」


「リボ払いぃぃぃっ!!」


私の絶叫が響く。


シャロンが首をかしげる。


「え? あの毎月同じ額でいいやつ?」


ルルがぼそっと。


「……無限負債生成……アルゴリズム……」


「違う! 夢のシステムだ!」


ゼクスは自信満々。


「月々銀貨三枚でOKなんだぜ!」


「残りはこの剣の魔力で補填!」


「つまり――」


胸を張る。


「実質タダ!!」


――ぶちん。


何かが切れた。


「バカ野郎!!」


デスクを叩いて立ち上がる。


「何してんですかこの筋肉だるま!!」


「えっ!?」


「いいですか! リボ払いは!」


指を突きつける。


「借金の先送りです!!」


「えっ」


「しかも利息付き!!」


「えっ!?」


「その剣、いくらですか!」


「えーと……金貨五百万枚?」


「金利は!?」


「なんか……年率十八%って……」


終了。


脳内で計算。


答え。


即死。


「……無理です」


「何が?」


「返済」


「え?」


「一生かかっても終わりません」


「ええ!?」


「むしろ増えます」


「は?」


「戦えば戦うほど」


一拍。


「あなたの魔力、吸われます」


「え?」


「つまり」


ゆっくり言う。


「あなたは今」


「金融機関の“生贄”です」


「なっ!?」


ゼクスの顔が青くなる。


「う、嘘だろ……」


「本当です」


襟を掴む。


「今すぐ契約書を出しなさい!」


その瞬間。


コン、コン、コン。


ドアが叩かれた。


静かに。


正確に。


規則的に。


――嫌な音だった。


全員が黙る。


私はゆっくり顔を上げる。


「……来ましたね」


このタイミング。


偶然なわけがない。


「誰だ……?」


ゼクスが息を呑む。


私は答えた。


「――取り立てです」

※明日へ続きます。

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