表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/32

炎上?問題ありません。書類で英雄にします

「……ゼクスさん」


一拍。


「今のあなたの価値、地面に落ちた

ネズミの尻尾以下です。自覚ありますか?」


「はい……」


朝一。


ギルド『ラスト・リゾート』の会議室に、

私の声が落ちた。


冷たい。


完全に氷点下。


目の前。


ゼクスが小さくなっている。


パイプ椅子にちょこん。


頭には大きなタンコブ。


完全に借りてきた猫だ。


「いや……リィン、違うんだって」


視線が泳ぐ。


「酒の勢いっていうか……その……銅像がさ」


「……銅像が?」


「挑発してきたんだよ」


「はい?」


「『おじさん、筋肉だけだね』って……聞こえて……」


「銅像は喋りません」


即切り。


「あとあなた、まだ二十代です」


沈黙。


「……ですが」


私は書類を一枚めくる。


「王都広場の『賢者アラバスタ像』をラリアットで粉砕」


もう一枚。


「駆けつけた警備兵に対し」


さらに一枚。


「『俺の筋肉の方が硬い!』と絶叫」


パタン。


「全部、事実です」


ゼクス、目を逸らす。


「……終わった」


小さく呟く。


「終わってません」


即答。


「終わらせません」


私は魔導水晶板を操作した。


パッ。


映る。


パンツ一丁で兵士に引きずられるゼクス。


「……あ」


カイトの顔が引きつる。


「うわ……これキツ……」


「俺でもここまでの不運は引かない……」


「自業自得です」


横で。


アルベルト社長が真っ青だ。


「私は悪くない……私は何も見てない……」


現実逃避モード突入。


役立たず。


ドン!!


扉が開く。


「リィンちゃん!!」


シャロンが飛び込んできた。


「ヤバいわよこれ!!」


手には号外。


ドン、と机に叩きつける。


『堕ちた勇者』


『犯罪者ギルド』


最悪の見出しが踊っている。


「エデンが乗っかったわよ!!」


「うちへのネガキャン開始よ!!」


「このままだと依頼ゼロ!!」


「せっかくの黒字が台無しよ!!」


とどめは、


「SNSも『#銅像おじさん』で炎上中よ!!」


ゼクスがさらに小さくなる。



……静かに。

私はハーブティーを一口飲んだ。


「想定内です」


「え?」


全員、固まる。


私は眼鏡をクイと押し上げた。


「エデンは、うちを潰したい」


「だから“分かりやすい不祥事”に飛びつく」


一拍。


「――想定内、予定通りです」


「いやいやいや!!」


カイトが手を振る。


「どう見ても終わりだろ!?」


「勇者が酒飲んで銅像壊したんだぞ!?」


「普通は謝罪して、うちは終わりだろ!?」


一拍。


「普通なら、です」


私は答える。


「でも、うちは違う」


「どう違うんですか?」


一歩、前へ。


「事実は一つ」


指を一本立てる。


「しかし」


「解釈は無限です」


沈黙。


「……は?」


カイトには理解できないようだ。


そこで、


私は書類の束を取り出した。


スッ。


「まず前提を変えます」


書類を一枚。


「この銅像」


トン。


「――実は危険物でした」


「え?」


「内部の魔導回路が劣化」


「いつ爆発してもおかしくない状態だった」


「という“診断書”が」


一拍。


「今、完成しました」


「今!?」


カイトが叫ぶ。


「今です」


私は続ける。


「つまりゼクスさんは」


指を一本立てる。


「酔って暴れたのではない」


一歩、踏み込む。


二本目の指を立てる。


「――市民を守った」


「……は?」


三本目の指を立てる。


「危険な遺物を」


「自分の体で」


「無償解体した」


「英雄です」


沈黙。


ゼクスが口をパクパクする。


「……俺、英雄?」


「はい」


即答。


「さらに」


私はもう一束、書類を並べた。


「寄付金の受領証」


さらに、もう一束。


「補修計画書」


「全部用意済みです」


「で、でもよ……」


ゼクスが震える。


「『おじさん』って言われてキレたのは……事実だぞ」


「いいえ、違います」


即否定。


「あなたは」


指をゼクスにビシリと向ける。


「子供たちが危険な像に近づかないよう」


一拍。


「――わざと目立った行動をした」


「言わば、ヒール役です」


「……は???」


「そして」


私は笑った。


「これから会見を開きます」


「謝罪――」


一拍。


「という名の、功績発表です」


「それ詐欺じゃねえか!?」


ゼクス絶叫。


私はスーツを投げつけた。


バサッ。


白い神殿騎士風スーツ。


「違います」


「ブランディングです」


「……は?」


「ブランディングの再構築です」


「ブラン……?さい……?」


「つまり、イメージを作るんです」


「英雄としてのイメージをね」


私は振り返る。


「カイト君」


「は、はいっ!?」


「あなたは市民役をやってください」


「ええっ!?」


「その場を、偶然通りかかって感動する人役です」


「よくわからないけど、や、やります!!」


「シャロンさん」


「は、はい!」


「記者への賄賂……じゃなくて、“取材協力費”を」


「はい!!」


私は時計を見る。


「――三時間後」


一拍。


「ゼクスさんは“王都を救った英雄”になります」


静寂。


不祥事は終わりじゃない。


適正に処理すれば、強力な武器になる。


私はペンを走らせた。


「さあ」


顔を上げる。


「仕事の時間ですよ」


勇者ゼクス。


人生最大の“演技”。


――開幕。

次回へ続きます

面白かったら、ブクマ、感想をお願いします。

創作の燃料になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ