表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/62

未承認爆発、却下します!

ズズズズズ……。


ラボ中央の円筒装置が、さっきまでとは明らかに違う

――重く、嫌な振動を鳴らし始めた。


低い。


深い。


「……あ」


ルルが、ぽつり。


「……冷却水の……ポンプ……」


「……さっきの……爆発で……止まってたの……忘れてた……」


「ルルさん!!?」


即ツッコミ。


遅い。


遅すぎる。


「……リィンさん……逃げて」


一拍。


「……あと……三十秒で……広場ごと」


「……消し飛ぶ……『進捗』に……なる」


進捗じゃない。


災害だ。


装置の表面が、じわりと赤く染まる。


鉄が、焼ける色。


空気が歪む。


カイトが叫ぶ。


「うわあああ! だから嫌だったんだってぇぇ!!」


出口へダッシュ。


だが。


ガンッ。


ドア、開かない。


歪んでいる。


さらに、


外からロック。


完全に詰み。


「な、なんでだよぉぉ!!」


絶望。


「……なるほど」


私は、足を止めた。


逃げない。


眼鏡を、クイと。


「管理されていない進捗とは、

ここまで暴力的なのですね」


「そんな感心してる場合ですかぁぁっ!!」


カイトが叫ぶ。


だが、私は慌てない。


公印を取り出す。


静かに。


計算開始。


全職種カンスト。


事務官としての私の魔力が、

空間の“バグ”を解析する。


因果が乱れている。


確率が壊れている。


だが――


「ルルさん。カイト君。伏せなさい」


一歩、前へ。


「……承認されていない爆発など」


さらに一歩。


「この私が、一ミリたりとも

予算(現実)として認めません!」


私は装置の心臓部へ――


安全点検チェックリストを、叩きつけた。


◇◇◇


「リィンさん、ダメ……です!」


ルルの声が震える。


「安全弁……固着……」


「……あと十秒で……ラボごと……概念消滅……!」


円筒装置。


『未来領収書予測機(仮)』。


もはや機械じゃない。


災厄だ。


災害だ。


空間がぐにゃりと歪む。


触れれば消える。


異次元空間へ飛ばされる。


「うわぁぁぁ!! 神様ぁぁ!!」


カイト、床で土下座状態。


「幸運! 俺の幸運どこ行ったんだよ!!」


しかし、無反応。


沈黙。


チート、不発。


「カイト君、うるさいです」


即切り捨て。


「……ルルさん。カウントを続けなさい」


「思考停止は業務放棄です」


「……は、はい……」


震えながら。


「……残り……五秒……」


私はチェックリストを一瞥。


物理冷却――不可。


魔力停止――不足。


だが。


事務的には単純だ。


これは。


「無許可で支出されるエネルギー」


それだけ。


なら。


処理方法は一つ。


「……残り、三秒……」


ルルの声が細くなる。


「……リィンさん……最後に」


「……おやつ……食べたかった」


「却下です」


即答。


「あなたは次の四半期まで

我が社の労働力です」


私は公印を構える。


右手。


そして左手に――


『エネルギー転換・譲渡承諾書』。


「ルルさん!」


鋭く。


「排熱ポートを、私にバイパス!」


「……え!?」


「……そんなことしたら……リィンさんが……」


「いいからやりなさい!」


一喝。


「事務官の『強制介入』です!」


その瞬間。


ルルがスイッチを叩く。


次の瞬間。


来た。


熱。


魔力。


圧。


すべてが、牙を剥く。


だが。


「判定:――受領」


公印が光る。


「全エネルギー、受理しました」


紙が舞う。


無数の領収書。


契約書。


請求書。


それらが盾になる。


いや――


変換装置だ。


暴力が。


破壊が。


数字に変わる。


コストに変わる。


値に落ちる。


そして――


吸収。


「な……なんだよこれ……」


カイト、顔を上げる。


「爆発が……消えてる……?」


「消していません」


私は淡々と答える。


「記帳しています」


さらに吸収。


限界が近い。


なら――


「ルルさん!」


「この過剰進捗、どこに流します!」


「ここで捨てれば、辺り一帯更地です!」


ルル、目を見開く。


閃く。


そして。


「……屋根……!」


「……アンテナ……!」


「……対エデン用……ジャミング装置……!」


理解。


即断。


「採用」


公印を振り上げる。


「承認印、発行!」


床へ――


叩きつける。


「判定:――進捗、強制執行!!」


ドォォォォォォォン!!


衝撃。


だが今回は違う。


破壊ではない。


収束。


放射。


屋根から、不可視の波動が広がる。


王都へ。


さらに広域へ。


結界。


通信遮断。


その瞬間。


エデンの密偵たちの端末が――


一斉に爆発。


情報、遮断。


解析不能。


サーバーは。


「承認待ち」


無限ループ。


完封。


「……ふぅ」


私は息を吐いた。


熱が引く。


世界が戻る。


ルルが呟く。


「……爆発を……電源に……変換……」


「……リィンさん……人間……?」


「事務官です」


即答。


「魔導王とか、残業代出ませんから」


カイトの前に立つ。


まだ、震えている。


私は、ゆっくりと指を差した。


「……カイト君」


一拍。


「その領収書」


「まだ、未処理ですよ」


「……は?」


顔が固まる。


「は、じゃありません」


淡々と。


「あなたの業務は、ここからが本番です」


一歩、距離を詰める。


「今回の一件」


紙を一枚、差し出す。


「全て、帳簿に反映します」


「え……」


「寄付金の流入」


「広報効果の算定」


「エデンへの損害賠償請求」


「追加契約の起案」


指を折る。


止まらない。


「さらに」


一拍。


「今回の“成功モデル”を標準化します」


「ひょ、標準化……?」


「はい」


即答。


「次からは、誰でも同じように炎上を“利益”に変えられるように」


カイトの顔から、血の気が引いた。


「……リィンさん」


かすれた声。


「これ、終わるの……?」


「終わりません」


即答。


「仕事ですから」


沈黙。


私は、にっこりと微笑む。


「安心してください」


一拍。


「逃げ場はありません」


「そんな安心いらねえよ!?」


崩れ落ちる。


私は視線を外す。


デスクの上。


山積みの書類。


その一番上に、新しい案件。


――『エデン関連・追加調査依頼』


ペンを取る。


カリ、と音が鳴る。


「……次です」


小さく、呟く。


「まだ、終わっていません」


一拍。


「“本番”は、これからです」


◇◇◇


カイトの受難は――


まだ、始まったばかりだった。

※明日からしばらく19時前後の更新となります。

次回へ続きます。

面白かったら、ブクマ・感想をお願いします。

作者の燃料になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ