65 魔道具のためにできること 1
夢占さんに結局誰に合わせるのか明言されずに、私は連れられて行きます。
あれ、建物出ちゃいましたよ?
魔法司の建物を出て、佐加里探題府でも大きな建物が二棟並んでいる場所に連れられてきました。
なんかちょっと不安です。
「あの、この建物は何なのです?」
夢占さんに聞いてみます。
それには夢占さんはにっこりと笑ってごまかします。
なんか帰りたくなってきました。
その建物の前に着くと、右側の建物の方へ向かいます。
そこには衛兵らしき人が扉の前には立っていましたが、建物に看板等はありませんでした。
あれ、今まではちゃんと何の建物なのかわかるようになっていたのに、ここにはそれがない?
これって、一般人が来る用がないから看板がないということですよね。
うん、なんか帰りたくなってきました。
衛兵さんは夢占さんを見ると特に咎めることもなく、敬礼だけして私達をとおしてくれます。
あれ、夢占さんって顔だけで、自分の職場以外にも出入りできるの?
結構お偉いさんなのかな?
私は建物に入ってから、いろいろ夢占さんに話しかけたが、すべて笑顔でごまかされる。
う、う、こんな事なら、付いて行くなんて言わなきゃよかったよ。
やがて、目的の部屋に辿り着いたようで、そこで夢占さんは自分が来たことを告げる。
中の人物はそれに応え、中に入るように声を掛ける。
相手が見えないけど、礼儀正しく一礼してから、夢占さんは入室する。
私もとりあえず、それにならって中に入る。
「よく来たな。茜殿。夢占もわざわざ連れて来てくれて、礼を言う。儂は神戸三郎時貞。佐加里探題北方長官であり、佐加里の代官職にもある。」
中にいた人物が、そう言ってきた。
「長官様?領主様?」
長官?”きたかた”って何かな?ラーメン?それに代官?なんかよくわかりません。
相手の言葉を聞いて、そう考えながらも、失礼がないように役職だけ呟き返した。
「ははは、そうだぞ。驚いたか。」
「な、なぜ、そんな方が、私を?」
神戸さんは笑って愉快そうにしているけど、私の脳はそんな得偉い人のところに連れてこられたことに理解できずにいる。
「いやな、市中に珍しい野菜をひろめただろ。それで、色々調べさせて貰ったが、そればかりか、錬金術で金剛石を作ったり、先の動乱では右衛門にも協力をしてくれたようだし、今回も何やら面白い魔法を作っていると聞いて、多才な人物に会って、褒美を授けようと思っただけだ。」
「お代官様に褒美を頂くようなことをした覚えはありませんが?」
それって、私が自分のために思い付きでやったり、なんか巻き込まれただけのことだし、褒美をもらうようなことではないのでは?
そう思い、褒美がなぜ貰えるのか聞き返す。
「そのようなことはないぞ。すでに金剛石も我が領内の者達だけでなく、他領にも評判になっておるし、この間、其方の野菜も食べさせて貰ったが、実に美味かったぞ。あれらがもっと流通するようになったら、更にこの佐加里の評判も上がると思っておる。」
「あー、あれらは私が生活するための資金や美味しい物を食べたいなと思たから作っただけで、それ以上のことは考えていませんでしたので、お気になさらず。」
「いや、そうはいくまい。最初は野菜も領外の村で作った物を、わざわざその村の者に指導を頼み、佐加里の近郊我が領内の村にも普及させようとしていると聞いておるぞ。他領の発展で終わらせず、我が領にも利を持って来ておるではないか。」
「あー、それも美味しく野菜を食べるため、輸送に向かない野菜をこの街の近郊でと思っただけです。」
その辺も、白菊村の人や獣人の人に無理を言って、この街に野菜を美味しく届けるために、輸送に手間のかからない村で葉物野菜とか作れないかとお願いしただけだよ。
別に領地どうこうなんて、考えてません。
そう思いつつ、そう、それを弁明した。
「なるほどのう。まあ、そなたにその気はなくとも、我が領内の評判を高めることと、治安に協力を頂いたのだ。それだけの働きをしたのだ。褒美を与えても問題はなかろう。」
そんなの貰っちゃっていいのかな?
そんなことを考えていると、夢占さんが助言をしてくれた。
「茜さん、悩むことないですよ。あの金剛石も野菜もそうですが、なにより、違法魔道具の早期発見などもあり動乱が早期に収束したことで、南方の手を借りずに済んだのも北方長官としてありがたく思っているのですから、受け取ってあげてください。」
うん、”みなみかた”、”きたかた”……、ああ、南方、北方ね。
でも、それって何かな?疑問に思い尋ねてみる。
「あの、その南方とか北方って何ですか?」
「ああ、失礼。探題勤めでないとわかりませんよね。探題府には北方、南方と二つの組織があって、それぞれがことにあったっているのですよ。」
うん?時代劇の北町奉行と南町奉行みたいな関係かな。
時代劇でも、よくいがみ合ったりしてたものね。
私は質問はしたが、あまり興味がなかったので、夢占さんの説明を聞いてそんな風に思って納得する。
「そうなのですね。」
「ええ。」
「なにそんなことを楽しそうに話す。夢占は南方の息子であろう。」
「いえ、元息子です。夢占に養子として籍に入りましたので。」
「そうであったな。」
あー、夢占さんて、元お偉いさんのご子息なんだ。
だから、さっきも用件を話さずにこの建物に入れたのね。
でも、お父さんの方ではなく、こちらに出入りがあるということは、父子関係は良好ではないのかな?
なら、神戸さんの言動はちょっと意地悪な気もするな。
私がそんなことを考えて、ぼーっとしていると、夢占さんが神戸さんに言います。
「そんなことはどうでもいいでしょう。茜殿が困っていますよ。」
「すまんな、話が逸れたな。それでだが、なにか所望する物はあるか?可能な物なら用意するゆえ、遠慮なく申すがよい。」
私はどう答えていいのか、わからずに夢占さんを見る。
夢占さんは私と目線が合うと優しく微笑む。
うーん、遠慮なく言っていいということなのかな?その仕草じゃ、わかりづらいよ。
それから、私は少し考え、そうだと思い付き、こう口にする。
「では、本日、魔法を完成させまして、それを使った魔道具を作る際の素材でそちらで用意できるものがありましたら、頂きたく存じます。」
「新しい魔法に取りかかってると聞いてはいたが、をもう完成させたのか。それに魔物の素材か。まぁ、よいだろう。可能な限り便宜を図ろう。何かあれば、そこの夢占に申すがよい。夢占よ、任せるがよいな。」
神戸さんはいろいろと表情を変えながら、そう言ってくれた。
「はい、承知いたしました。」
神戸さんの言葉を聞いて、夢占さんはそう言うと、一礼をした。
「この度はありがとうございます。」
私も二人のやり取りを見て、慌てて、そうお礼を述べた。
こうして、魔道具作りに思わぬ協力を得ることができた。
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