57 老亀堂にて 8
「お妙ちゃん、少し見て行っていいかな。私が買ったのって主に調理用の魔道具だし、他にどんなのがあるか知りたいからね。いい?」
「はい、私も他にもどんな便利なものがあるのか見てみたいです。」
私の頼みに、お妙ちゃんも積極的に賛成してくれたので、心置きなく見学して行きましょう。
「それでは、少し見させていただきますね。」
私じゃお房さんの言葉にそう答える。
「はい。どうぞ。なにかありましたら、遠慮なくお尋ねください。」
お房さんは、そう言うと少し離れたところで他のことをはじめました。
あまり、まとわりつかれると見づらいから、有難い心遣いだね。
私とお妙さんは、さほど広くない場所に所狭しと置かれた魔道具の数々に目をとおす。
一応、それぞれの魔道具に使い道や金額などの説明を記載はされている。
説明を見ると、どれも強力な魔法を生活魔法のように威力を落として、様々な魔法を組み換えたりして、作られているようだ。
なるほど、火や風等の魔法をいろいろ組み換えたりして、様々な道具にしているんだね。
ただ、私が作ろうとしている物は既存の魔法で再現できない物だからなぁ。
それと作る魔法自体も威力も落としたりできない代物だから、そう考えると、これから魔法を開発して、魔道具化するのも大変そうだよね。
結構、いろいろな用途の魔道具もあるんだね。
私は説明書きを見ながら、魔道具を眺め見る。
掃除機っぽいのもあるけど、持ってみると結構重いし、形もちょっと取り回しが悪そうで使いづらそうだね。
他の物も、プラスティックとかないから、外形は木製の物が多いし、どうしても数を作るには丸くも出来ないので、形も洗練はされてないよね。
そう考えると、元から鉄製の物が多い調理器具周りの魔道具はまだまともな感じだね。
お妙ちゃんも説明を読んで、興味がある物を手に取ったりして見ている。
「どう?なにか気に入ったものはあった?」
私はそんなお妙ちゃんに声を掛けてみる。
「うーん、身の回り用の魔道具は、説明を読む限り、自分でやった方が楽な気がしますけどどうなのでしょうね。でも、この冷温送風機とかは便利そうですね。」
「あー、そうだねこの辺の掃除機や雑巾がけ機なんてものは、手が空いていれば人がやった方が綺麗になりそうだよね。あと冷温送風機も暑い時や寒い時、確かに便利そうだけど密閉した部屋を作らないと、障子や襖、欄間から空気が漏れちゃうから、目の前に置いて使わないとだよね。」
うちの実家も純和風の部屋ばっかだったから、空調機なんてものはなくて、部屋の中は夏は畳にべったり寝転がって涼を取ったり、冬はストーブの前で温まって寒さをしのいだからね。
東京に来て、空調機のある生活を体験して、あまりの快適さに実家に戻りたくないとまで思ってしまったよ。
そんな、向こうでのことを思い出していると、お妙ちゃんが私の言葉を聞いて、残念そうにつぶやいた。
「あー、今の部屋だと、確かに空気を冷やしたり温めても、部屋全体を冷やしたり、温めたりは大変そうですね。」
「それとこれ、かなり大型魔石を使っているのか、ちょっとこれじゃ、私達じゃ、値段も高いから買えなし、もし、買えても魔力補充が大変そうで使うのは躊躇しちゃうよ。」
私は説明書きに目を通りして、夏場と冬場の一月の魔石の消費目安を見て、驚いてそう声を上げた。
「本当ですね。夏で三時間使うのにだいたい魔力補充に一時間、冬で同じく三時間使うのに魔力補充枚に一時間半も必要になるのですね。今、家にある魔道具の一日の魔力補充がだいたい一時間で私の魔力が半分以上なくなっている感覚だから、これはまともに使うのは無理ですね。」
「私でもお店の仕事をしていない時でも夏でも四、五回ぐらいが限度かな。これじゃ、例え買えても使い物にならないね。」
「あー、それは、便利なんですけど、今までも貴族の方が三台しか買っていないですね。それもかなり勉強して売ったから、せっかく作ったのに、あんまり儲かっていないんですよ。」
私達の声に気付いたのか、お房さんが、そう私達に教えてくれた。
「へぇー、貴族様の中にはこんなものを使うことが出来る方もいるのですね。凄いや。」
「まぁ、さすがに普段使いではなく、産まれた子供が夏や冬に病気にならない様に数年使うといった感じらしいですけどね。お世継ぎが亡くなると、お家がお取り潰しになるから、金と人が使える貴族様が、子供の健康を守るために買ってくれるといった感じなのですよ。」
あー、魔法や魔道具があって、大分衛生的にはなっているけど、まだまだ病気になると大変だからね。
そう言えば、九重さんの仕えていた貴族も、本人とお世継ぎが亡くなってお取り潰しになっちゃったんだっけ。
そんなことになれば、今まで築いてきたものが無くなってしまうなら、多少無理はするか。
「自分だけでなく、家来の生活も懸かっているから、大変なんですね。」
「そう言うことです。ただ、見栄のために買う物でないから、値切られちゃうんですよね。」
お房さんが、ため息交じりにそう言う。
人様に見せて自慢する物は、言い値で買ってくれるが、そうでない物は、結構、きっちり値切られてしまうそうだ。
だから、その点も考えて値付けしないと、大損してしまうので、注意が必要らしい。
他の魔道具店と比べて良い品を作り、値付けもあまりかけ離れないように考えて、差別化を図って行かないといけないので、お房さんも苦労しているそうだ。
「商売って、何をするにも大変ですね。」
錬金屋でも扱っている物が日持ちしない物なので、必要量を適正な価格で仕入れられないと損をすることもあるので、私はしみじみとそう言った。
「「ですよねー。」」
その言葉にお妙ちゃんとお房さんはそう答えていた。
二人とも主に接客をしているから、私よりその辺の苦労は多いのだろうな。
「他に何か気になった物はありますか?気になる質問でも分かる範囲で答えますよ。」
その後、お房さんは接客しているのを思い出し、私達にそう言ってきた。
「えーと、大型の魔石を使う魔道具を作っても、その魔力補充量がかなり必要となると、私の考えた魔道具って実用化できても、使えるのかな?」
私は冷温送風機の魔力の消費量に驚いたので、そう聞いてみた。
「茜様の考えている魔道具って、こちらの世界と異空間に繋げてそこに物を入れて、出し入れできるようにするものですよね。」
「そうです。良く知っていますね。」
「ええ、兄から伺いいましたので、それは楽しそうにいろいろ実用化の可能性を考えてましたよ。それで、なんでも空間を固定して、取りだす時だけ空間を繋げれば、魔力の消費を抑えられるのではないかと話していましたが、兄から聞いていなかったですか?」
「うん、そこまで詳しく聞いていなかったです。こちらである程度魔力を抑えて、魔法を作れれば、一応さらに省力化できるかもとは、お話しいただけましたが。」
私は、お房さんの質問に、素直にそう答える。
でも、いいことを聞きました。
魔法を作るとき、今の考えを活用すれば、魔道具として実用化出来たら、実際使う際に魔力の消費を抑えられるようになるのかもしれませんですね。
「はぁ、すみません。次回は私もお客さんがいない時であれば同席しますね。兄も頑張ってくれ説明をしてくれているのですが、本当にすみません。」
「いえ、お房さんのおかげで、何となく繋げ方はわかりましたし、魔法司で、先人が挑戦した資料もお借り出来ましたので、いろいろと試してやって行きたいと思います。本日は、急な来訪にも対応いただき、ありがとうございました。」
「こちらこそ、あまりお構いも出来ませんで、申し訳ありません。」
そんな話をしていると、店先にお客さんが来たので、お房さんはそちらに向かう。
私達も、結構長くお邪魔してしまったので、これで失礼をすることにした。
ちょっと、遅くなってしまったので、お昼の飯屋で持ち帰れるおかずを幾品か頼み、それを夕飯にすることにした。
これで、夢占さんから借りた魔法司の資料を読む時間も作れますしね。
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それと先々週辺りにどなたかがSNSか何かで紹介して下さったのでしょうか?閲覧数やブックマーク等が増えましたした。ありがとうございます。




