56 老亀堂にて 7
「で、これはどう使えばいいのですか?」
差し出された何やら計器の付いた魔道具を、私はこねくり回しながら、甚兵衛さんに聞く。
「あ、それもっと大事に扱ってください。そ、それはですね。そ、その魔道具を両手で掲げるように持って、魔力を魔法に変換せずに右手から左手に流せばいいのです。」
「魔法を迷宮で使い切って来たから、魔力が回復していないけど大丈夫なのか?」
私は魔力切れを起こすまで魔力を使ってきたので、その状態で使っても大丈夫なのか聞いてみる。
「あ、大丈夫です。」
ふむ、何が大丈夫かわからなけど、私は魔道具を目の前に差し出すようにして、両手で持つと、そこにいわれたとおり、ゆっくり魔力を流す。
あれ?魔力が四散せずに、ちゃんと戻って来るよ。
でも、これでどうして、魔力量が判るの?
疑問に思いつつも魔力を流し続ける。
しばらくすると、魔道具が魔力を受け取らなくなった。
「あれ、魔力が流れなくなったけど?」
「あ、終わったようですね。」
そう言って、甚兵衛さんは手を差し出してきた。
返せばいいのかな?魔道具を甚兵衛さんに手渡す。
受け取った甚兵衛さんは、魔道具の計器に目を通す。
「おお、凄い。上の中くらいの魔力量ですよ。」
甚兵衛さんはその数値に驚いて、そう声を上げる。
あ、驚いたり、気が高ぶると、甚兵衛さん流暢にしゃべれるのかな?
ああ、でも、親しくなると面倒な人と言っていたから、今は緊張しているだけなのですかね。
しかし、私の魔力って上の中くらいなの?
魔力で引っ張られて来たから、もっと凄いのかと思ってた。
いや、もちろん上の中だって凄いとは思いますけど、ほら、小説やアニメとかでも、主人公は凄すぎて振り切れちゃったりして、すごい、さすがってなるのにね。
まぁ、私はそんな物語の主人公って訳じゃないけど、漂着者って言われている存在なんだけど、結構こっちの世界に流れ着いてるようだし、そんな特別な存在ではないのかな。
そんな考えに私がふけっている間、まだ、甚兵衛さんは魔道具の計器を楽しそうに見ている。
でも、数値的には凄い方なのだろうけど、そんなに眺め続けるほど、そこまで珍しそうな数値でもなさそうだけど、魔道具をいじるのがそこまで楽しいのかな。
「魔力量が上の中くらいだそうですけど。そこまで珍しくもなさそうですけど、楽しそうですね。」
私はいつまでも計器を見ている甚兵衛さんにそう尋ねる。
「いやいや、これだけの魔力量があれば、きっと、この佐加里でも五本の指には入りますよ。」
「ええ、でも魔力量は上の中ですよね。それっておかしくありません?」
なんでだ?たぶん、九段階評価の上から二番目だよ?それなら、そこまで魔力量は高くはないのでは、よくわからないな。
そう思い、疑問を口にする。
「あー。この魔道具の魔力量計測は、人の保有できる理論上の魔力の最大上限値から、魔力量を計測する仕組みになっているのですよ。
その中でも、上の上に分類されるなんて元々の魔力量が多いうえに、かなりの研鑽を積んだ人しか出せないのです。
なのに、この若さでここまでの数値を出せるのです。凄いですよ。今後の伸びしろを考えれば、末恐ろしいです。」
甚兵衛さんは興奮気味にそう答えてくれた。
うん、なんか流暢に長々としゃべれましたね。
興奮して、私達の前でも素の状態になったのかな。
慣れてきたら、こんな調子で話し続けられるのか、それはそれで確かに面倒そうだね。
「そ、そうなのですね。」
私は甚兵衛さんの慣れない早口の長文にたじろきながら、そう返答する。
「茜さん、凄いですね。」
お妙ちゃんも、甚兵衛さんの説明を聞いて、そう言ってくれた。
「ありがとう、お妙ちゃん。」
私もそれに、嬉しそうにそう返した。
でも、そんなことが知りたくて魔道具で計測をしたことを思い出し、改めて甚兵衛さんに訪ねる。
「それで、どのくらい魔力が残っていて魔法を完成させれば魔道具として完成させることが出来るのでしょうか?」
「あ、そうでしたね。これほどの魔力量ですと、一般的魔道具でしたら、三割ほどの消費で完全発現出来れば、作れるようになりますね。」
え?今回、とても小さな空間を作成して、繋げただけで維持も出来なかったのに魔力が枯渇するほどだったのに、三割で完全に再現を指せないといけないの。
「それはちょっと無理ですよ。」
「そ、そうですよね。今流通している最上の材料で作れば、恐らく八割ほどの魔力消費までで完全に発現させられれば作れるでしょうけど、それだととても量産は出来ないですし、値段もかなりの物になってしまいますけど。」
「最上級の品でも魔力を残さないとなのですねですか。ちなみにお値段はいかほどになりますのでしょうか。」
「そ、そうですね。す、少なくとも金貨にして三万枚ほどでしょうか。」
「はぁ!?そんな金額は無理です。出せませんよ。」
私は、金額を聞いて驚いて、そう声を荒げる。
「で、ですよね。まぁ、魔力を残して魔法を行使する目安にして頂ければと思います。う、上手く工夫をすれば、省力化できるかもしれませんですしね。」
甚兵衛さんも同意しながらも、そこに収まるように頑張ってみるようにと助言をしてくれた。
うん、このままだとかなり厳しそうだけど、九重さんが王都へ目指すまでは、頑張って取り組んでみましょう。
「わかりました。かなり難しそうですけど、頑張ってみます。お妙ちゃんも長くなりそうだけど、迷宮でのお付き合いよろしくね。」
「はい、しっかり協力させていただきます。」
「あ、お二人とも、が、頑張ってください。」
「はい、甚兵衛さんもその間もご助言等ご協力を願いしますね。」
「え、ええお任せください。」
こうして、かなり難しい条件が判明したけど、夢占さんから借りた書物を読んだりして、魔法についても工夫をして頑張ってみることにしましょう。
成功しても、失敗してもいい経験になると信じて、頑張りますよ。
その後、甚兵衛さんに別れを告げ、店の方に戻り、お房さんにも別れの挨拶をして、帰宅しようとした。
「ねぇ、まだ日も高いし、せっかくだから、うちの魔道具を見て行きませんか?ほとんどが兄が作った魔道具なんですよ。」
挨拶をして、店を出ようとしたところ、お房さんにそう声を掛けられた。
そう言えば、お政さんの家の私が買った魔道具も、お政さんに頼んで用意して貰った物ばかりなので、じっくりとどんな魔道具があるのかなんて、知りませんからね。
気分転換に見て行きましょうか。
よろしければブックマーク、評価、ご意見、感想などよろしくお願いします。




