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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
53/77

53 老亀堂にて 4

 「禁呪とはですね。自然の摂理でなしとげられない魔法、例えば、時を遡るとか、死んだ者を蘇らせるとかの魔法です。」


 「ふーん。でも、錬金術で金が作れますよね?あれは平気なのです?」


 私は錬金術で金が作れると言うのを思い出し、それは問題ないのかと思い尋ねてみる。


 「よく知っていますね。そうなんですよ。無から有を作り出す術は禁呪になってないのです。私達も日夜研究をしてはいますが、恥ずかしながら、禁呪と通常の術の境をまだ我々が定義できずにいるのです。」


 私の問いにそんな感じで答えてくれた。

 それを聞いて、私も錬金術になぞらえ相槌を打つ。


 「錬金術も同じですよ。使える、使えないの境界は、錬金書庫の判定に委ねられていますからね。」


 「おや、茜殿は錬金術士だったのですね。失礼しました。若いなのに色々知っているし、新たな魔法の創出を試みようなんて考えるから、変わり者かと思ってましたよ。」


 「あのー、随分酷いこと口走りますね。」


 夢占さんの言葉を聞いて、随分失礼な言い分だと思い、そう文句を言う。


 「あははは。すみません。これくらいはっきり言わないと、ここの人達は理解できない人が多いので、つい、外の人にも同じように同じように扱ってしまいました。

 でも、外の人もこれくらい言わないと、本当に好き勝手してしまう人が多いので、ここでは、これくらい普通と思っていてください。」


 夢占さんは悪びれもせず、そう言う。

 そんなに変な環境の職場なのですかここは、それとも魔法の研究をする人達って、そんな危ない考えの人達ばかりなのですか?


 「まぁ、いいでしょう。あまり聞かない方が良さそうですから。」


 「そうしてくれると助かります。」


 「でも、私の作ろうとしてる魔法って、時間は止めれればとは思っていますが、遡ろうとは思ってませんよ?どこが禁呪に引っかかるのでしょう?」


 私は私が作ろうとしている魔法で気を付けなければならない点を確認するために、確認をする。


 「ああ、それはですね。異世界と次元を繋げようすることは禁呪になるのですよ。……。」


 そう言って、詳しく説明をしてくれた。

 異世界と行き来する術を探るのは、禁呪になるらしい。

 異世界の生命をこちらに引き入れたりされたり、向こうに渡したりすると、未知の細菌などや存在しなかった生物によって世界のバランスが崩れる可能性があるからだそうだ。

 でも、私のような漂着者と呼ばれる存在がこっちの世界に頻繁に現れているのはいいのかと疑問に思い聞いてみたが、漂着者は魔力がこの世界に流れて人として具現化した者であるので、新たな病気等の心配はないだろうし、なにより、自然現象として起こっているので問題はないそうだ。

 それに漂着者によりもたらされる知識や考え方には有用なこともあるので、魔法司(夢占さんが勤めている部署の名称とのことだ)でも、かなり研究に役立ったことがあったとのことでした。


 そんな感じでいろいろ話がそれながらも、いろいろ魔法を創出する際に考えなきゃいけない、禁呪に触れそうな部分の説明を受けた。

 夢占さんの話は難しい話もあったけど、私の疑問には丁寧になるべくわかり易く答えようとしてくれたので助かりました。

 つまり、収納する空間自体をどっかから持ってこずに、私が作り上げないといけない?

 うーん、魔力も凄く使いそうだし、それって大変そうじゃない?

 また、月一回の面談以外でも分からないことがあれば協力しますのでいつでも来てくださいと言ってくれた。

 魔法の専門家がそう言ってくれるとても心強いです。


 そして、魔法についての聞き取りも終わり、書類の作成に入る。

 ここでは、九重さんが書類の中身を夢占さんとやり取りしてくれている。

 何か独特な書式でいろいろ書かれていたが、書類のやり取りをしてくれた二人が丁寧に説明してくれたので、有難かったです。

 そうこうして、無事に書類の作成も終わりました。

 これでやっと魔法を試せます。

 ただ、ちゃんと考えて魔法を考えてやらないと、錬金術の時のように魔力が足りなくなると野外でやるから大変そうだよね。

 最初のうちは、誰かに一緒に来てもらった方がいいかな。

 となると、また、お妙ちゃんに迷惑をかけることになっちゃうかな。


 とりあえず、無事に手続きは終わった。

 私は九重さんにお礼をしっかり言って、帰路につく。


 「今日はありがとうございました。」


 「あまり役立ったとも終えなかったが、そう言ってくれると嬉しいな。」


 「いえいえ、この世界の書類の仕組みがよくわかりにくいので助かります。」


 「そうか。そう思ってくれるなら、来た甲斐があったな。」


 「はい。感謝しています。で、ちょっと小腹が空いてませんか?どこかで何か食べていきません。」


 いつもはお店で軽くおにぎりとかで済ませているのですが、お昼もかなり過ぎているし、店に戻っても食べるものがあるかわからないからね。


 「それは、いいが、この時間にやっている店はあるのか?俺はあまり出歩いて食べたりしないから、わからんぞ。」


 「ふふふ、そこは任せて下さい。」


 私はそう言って、自信たっぷりに胸を叩く。

 獣人さんがやってたお店で私の野菜を売り込んだ際に、料理屋さんの知り合いが増えたからね。

 私の料理を教えたり、料理屋さんが考えた料理を試食させて貰ったりしたから、営業時間以外に顔を出して、どうにかできるのです。


 「では、茜殿に任せるとしよう。」


 「はい。では行きましょう。」


 うん、ここからなら、結構味も良くて人柄の良いご主人の料理屋が近いね。


 店の前に着くと、「支度中」となっていたが、私は名乗って扉を叩く。


 「よう。茜さんかい。どうしたんだい?なんか新しい野菜でも手に入ったのかい?」


 扉を開けて、中に私達を招き入れて、そう声を掛けて来た。


 「ごめんなさい。今日は、違うんだ。時間外で、申し訳ないけど、今日はお客として来たんだけど。大丈夫かな?」


 「おう、そうかい。生憎と昼の分の食材は全部はけちまって、俺達の賄いになるけど、それでよければ一緒に食うかい?」


 「うん、お邪魔でなければお願いします。」


 「では、そこに座っててくれ、すぐ準備するよ。」


 そう言って、店主は私達を席に案内する。

 こうして、店のご主人の好意で遅い食事を店のみんなさんと一緒にさせて貰った。

 私が錬金術で作った野菜の端切れなどを使った料理人見習さん達が作ってくれたものです。

 野菜とかは端切れでも、見習いさんといえどしっかりと基礎が出来ているようで、とても美味しかったです。

 舌鼓を打ちながら、楽しい一時を過ごせました。

 また、見習いさんも褒められてのが嬉しかったようで、すごく喜んでくれました。

 おう、そんなに喜んでくれるなら、いくらでも褒めて遣わすぞ。

 ただ、まずかったら、はっきり言わせて貰うけどね。

 そうしないと、勉強にならないからね。

 とにかくこれで、街での手続きも終わり、いよいよ迷宮内での魔法の実践となるのでした。 

 

書き始めて一周年になりました。読んでいただいてありがとうです。

皆様がよんでくれたのおかげで、書き続けられました。

よろしければブックマーク、評価、ご意見、感想などよろしくお願いします。

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