52 老亀堂にて 3
とりあえず、私は貴重な話が聞けて、満足して店に戻る。
私は満足だったが、お妙ちゃんには話が刺さらなかったのか、興味がなかったのか、いまいち話が難しかったのか、ともかく、いまいちだったようだ。
ただ、私も魔法を新しく作ると言う話はいまいちわからなかったので、その辺は、お政さんに詳しく聞くことにしよう。
「ただいま戻りました。」
お政さんに店に戻っって、そう挨拶をする。
「大丈夫だったかい?」
私達を見て、お政さんはそう言ってきた。
自分で紹介しておいて、大丈夫だったかいはないのではないですか?
まぁ、今回は大丈夫だっただけかもしれませんので、今後はどうなるか、わかりませんけどもね。
「今のところは大丈夫ですよ。ところで、今日聞いた話でどうすればよくわかんないので教えて欲しいのですけど、いいでしょうか?」
「なんだい?わかることは答えるけど、茜の話はむずいかしいからね。」
「そんなことないですよ。それでですね。魔法を新しく作れればという話をされたのですが、勝手に試して見ていいのですか?」
「魔法の創出かい。」
お政さんはそう言って困った顔をする。
ありゃ?なんか面倒な事なのでしょうか?
「大変なのですか?」
「別に大変じゃないんだけどね。」
なんか歯の奥に何か詰まったような言い方ですね。
これは手を付けない方がいいのでしょうか。
とりあえず方法を聞いてみましょうか。
「では、どうすればいいのでしょうか?」
「まぁ、……。」
お政さんはそう言って話し始めた。
魔法を新しく作るのは自由ではあるらしい。
ただ、ここでは佐加里で魔法を管理している迷宮探題府に一応事前に申請しに行かなければならないらしい。
そこで、考えている魔法についての概要を説明して、新魔法創出の許可を事前に貰わなければならない。
説明の中で、あまりに強力な魔法や危険と判断された魔法は創出するのを止められるらしい。
その上、魔法の進捗状況や問題点なども定期的に報告しなければいけないし、そのための手数料も毎月支払わなければいけないとのことだ。
そして、それを破って勝手に作ろうとしたのがばれると、死罪になってしまうらしい。
危険なことを勝手にされてはまずいから、仕方がないとはいえ、怖いね。うっかり、思い付きで試した魔法が発動しちゃったら、どうなっちゃうんだろう。
それについては、うっかり、新しい魔法を思い付きで発動させた場合は、よほど危険な物でない限り、再現性で安易に発動できると証明できれば、罰金で済むらしい。
そんな、安易に発動させられるかの証明って難しすぎない?
それと、お金を毎月払うのは、進捗を報告する意味もあるのと、一応、そこで助言も得られるから、支払い自体はそれほど無駄ではないらしい。
らしいと言うのは、お政さん自体は知識でしか知らないので、前に魔法を教えて貰った師匠に聞いただけらしい。
で、魔法が出来上がるか、諦めるまで、少なくないお金を毎月納めなければならないので、結構な負担になるらしい。
うん、魔法を作ること自体は届け出して、許可を貰えばいいだけだから、簡単かもしれないけれども、問題は納めないといけないお金の方だよね。
いくらだか、知らないけど出来るまで毎月納めるのは大変そうだね。
「わかりました。ありがとうございます。参考になりました。」
さて、どうしようかな。
お金的には、毎月かなりの金額が私にはまとまって入って来ますからね。
ただ、話を聞く限り、魔法を作るのがよくわからないんだよね。
とりあえず、今度時間を作って、お役所に聞きに行ってみよう。
可能性があれば、作ってみたいからね。
魔法でのアイテムボックスのような物の作成か、いまいちどうすればいいか思いつかないな。
思い浮かべる考え方としては、別の時空を作って、そこにこの世界を繋げると言うことなのかな。
でも、別の時空を魔法で作る?そんなことを魔法できるのかな。それを思い浮かべて想像する?
魔力を通したわけじゃないから、はっきりとはわからないけど、それだと、錬金術の仕組みを考えても、かなり魔力を使いそうなんだよね。
時間があるときは、そんな感じで魔法の作成方法を考えてはみるが、どうもうまく発動するという感覚がないんだ。
そして、迷宮探題府に行く予定を立てる。
今回は、申請なので私の付き添いは九重さんが同行してくれることになった。
最初はお政さんが行く予定だったが、その日錬金座の会合が重なってしまったので、延期にしようかと思っていた。
だけれど、行政の実務と魔法がある程度わかっている九重さんが同行に名乗りを上げてくれたので、
予定通りいくことが出来たのだ。
ありがとう。九重さん。
そんな訳で、新たな魔法のために迷宮探題府に行くことになった。
「ねぇ、九重さんも魔法が使えるよね。私が作ろうと思っている魔法って出来ると思う?」
「さぁな。俺は魔法を使うだけで、作ろうなどと考えたこともないからな。大抵の人も使うだけで、作ろうとは思わないだろうしな。」
「まぁ、私も私の作りたい魔道具の魔法が既にあれば、作ろうなんて思わなかったよ。」
「それでも、ないなら作ってやろうと思うのは凄いと思うぞ。」
「そうかな?」
そんなことを話しているうちに、迷宮探題府に到着した。
門を潜り、私の目的地である魔法を司っている部署の建物へと向かう。
魔法使いとしての登録をしに来た時も思ったが、ちょっと変わっているんだよね。
なんでも魔法が発動しないようにするための仕組みが張り巡らされているのでこうなっているらしい。
でも、魔法を扱っている部署に魔法が使えないようにしてあるってどうしてなんだろう。
なんか、すぐに魔法をぶっ放してしまう人でもいるのだろうか。
建物に入り、魔法の申請部署に向かう。
いきなり申請ではなく、まずは聞き取りから行うようだ。
私の考えた魔法を試していいかの確認をしてから、申請してお金の徴収という訳ね。
事前に申請して、お金払って、そんな事したらダメですだったら、無駄なお金払って悲しいものね。
それで、聞き取りを行う人が、最初は九重さんに向かって話していたのは、まぁご愛嬌と言うことで流そう。
どう見ても、私がただの付き添いだよね。
そんな訳で、自己紹介を済ませて、話を進める。
ちなみに、話を聞いてくれた人は夢占弥兵衛という、三十半ばといった見た目のいかにも魔法使いといった雰囲気の瘦せ型の男性だった。
とりあえず、私の作りたい魔法について話をする。
それを真剣にメモのようなものを取っているので、興味本位でそれとなく覗き込んでみたが、なんだろう一部読めない文字で書かれているよ。
私の説明が終わると、夢占さんはメモを取る手を止めて、しばらく考え込む。
あれ、もしかして、許可が下りない?そんな一抹の不安を私は抱く。
やがて、考えていた顔をこちらに向けて、夢占さんは、私に話しかけて来た。
「うーん、ちょっと考えただけでも、その魔法が使えるようになっても、かなり魔力が必要になるかもしれないですね。そして、常にその空間との接続の維持にを行わなければならないでしょうから、常時の魔力も必要になりますよ。」
「では、それだけの魔力があれば作れそうですか?」
「どうでしょうね。森羅万象すべての摂理をぎりぎり、侵さないで作れそうではありますが、作り方によっては禁呪となってしまう可能性もあるかもしれません。」
「禁呪ですか?」
これは、強力な攻撃魔法以外にも作っちゃいけない魔法があるのでしょうか?
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