46 祭典は続く 3
調理と試食が終わり、他のお店への売り込みもしてくれるとのことなので、それもありがたくお任せして、いくつか必要な物も買い込んで戻ることにする。
行きの荷車はお妙ちゃんが牽いてくれたが、帰りは空だから私が牽いて帰ると申し出た。
けど、なぜか、お藤ちゃんとサキちゃんが空の荷台に座り込んで楽しそうにしゃべっている。
まぁ、動いちゃえば、問題なく牽けるからいいか。
とりあえず、村の野菜の販売の目途が付いたので、あとはどれぐらい反響があるかだけど、場合によっては来年の増産を考えないとだよね。
白菊村だけでは、限界があるだろうから、もし、それ以上の反響があったら他でも生産を考えないとだよね。
まぁ、それは反響を聞いてから考えよう。
そんなことを考えて歩いていたら、サキちゃんが荷台から、私に話しかけて来た。
「誰か後を付けている。」
「え、私達の?」
「うん。」
おかしいなぁ、お役人さんの警護は終わったはずだけど?
まさか、前回の騒動の生き残りが私達を?
私とお妙ちゃんが一所にいるしあり得るのかな。
とくかく、もう少し詳しく状況を聞こう。
「後ろからついて来ているの?」
「うん、お箸持つ方の手の方にいる。」
そう言って、サキちゃんは箸で掴む動作をする。
「お妙ちゃん、どうしよう?」
私は隣を歩いていたお妙ちゃんに相談をする。
「茜さん、決して振り向かないようにしていてくださいね。サキちゃん、相手は何人だがわかります?」
うん、相手に気付かれないように私はお妙ちゃんと並んで、何事もないように荷車を牽く。
「二人。」
サキちゃんはそう答えながらも、お藤ちゃんと楽しそうに戯れている。
意外と器用なのか、それとも本当に遊ぶのが楽しいのか?
「なら、二手に分かれるのは悪手ですね。この先の角を曲がった所に、資材置き場になっている空き地がありましたよね。」
「え?そうだっけ?」
お妙ちゃんにそう言われたけどよくわかりません。この辺結構歩いているのだけどな。
「ほら、あの角を右に折れますよ。曲がったら走りましょう。」
お妙ちゃんがそう言うので、私はサキちゃんとお藤ちゃんにしっかり捕まるように言って、角を曲がった瞬間に駆け出します。
通りの一角に確かに材木が積まれている場所がありました。
そこに向かって、私達は一目散に走ります。
その場所には簡単な縄が張られていましたが、緊急事態と言うことで縄を潜って中に入ります。
荷車は見つからないようにと立掛けて置きます。
お妙ちゃんは、中に立てかけてある小ぶりの角材を槍代わりに手に取り、そこの一角に潜むように言います。
私もお妙ちゃんの角材より小さな棒を手に取り構えることにします。
無手より、マシでしょうからね。
そこに息を殺して潜んでいると、確かに誰かが声を上げながら、資材置き場の方に近づいてきます。
間違いなく誰かにつけられていたようです。
もし、向こうが刃物を持っていたら、こんな棒っ切れで何とかなるでしょうか?
もし、いざとなったら、後でお役人に捕まるのを覚悟で魔法を使うのも考えておかないとですね。
静かに周囲の音を伺っていると、しばらくしてサキちゃんが小さくつぶやきました。
「右から二人来る。」
私には聞こえませんでしたが、注意深く伺っていると影が近づくのが見えました。
やがて、お妙ちゃんが棒きれの間合いに入ると、突きを入れるように相手に飛び掛かりました。
「わ、ちょっと待ちいなさいって。」
相手からそう声が聞こえます。
うん、聞き覚えがある声です。
慎重に覗き見ると、そこには『光陰星霜』の奏さんとお涼さんがお妙ちゃんの一撃を何とか躱して、倒れ込んでいました。
お妙ちゃんも二人に気付き、棒を投げ捨て、慌てて駆け寄ります。
「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか。」
「ああ、平気、平気。ちょっと避けた時お涼にぶつかって、倒れちゃっただけだから。」
それに奏さんがそう答えます。
「うん、奏がへましただけだから、気にしないで。」
お涼さんもそう答えます。
二人とも大丈夫のようです。
でも、なんで私達を付けていたのでしょう。
「あの、私達を付けていたのはお二人ですよね。」
「ああ、そうだよ。お政さんに身辺警護を頼まれてね。」
「うん、私達もまだ佐加里を出る許可が出ないので、迷宮に潜れないから、お小遣い稼ぎでね。気付かれていないと思ったのにな。」
あたしの問いにそう二人は答えます。
「私達は気付かなかったけど、このサキちゃんが気付いてくれたのですよ。」
そう言って、私の後ろに隠れているサキちゃんを指します。
「なるほど、茜さん程度なら、気付かれないと思ったのに、そっちの子は優秀な獣人さんだったか。」
なんですか。私はだめな獣人ですか。
でも、確かに私基準で後を付けていたようですし、それに気付いたサキちゃんは優秀ですよね。
綾ちゃんが攫われた時も、しっかり後を追えましたしね。
私は自分のことのように自慢げに言います。
「サキちゃんのお母さんが迷宮で香露玉を臭いで探して採るほど、優秀ですからね。その血を引いているのでしょう。」
「あ、サキちゃんて、もしかして、おヨシさんのお子さんの?」
私の言葉を聞いて、お涼さんがそう言ってきました。
サキちゃんも、それに短く反応します。
「うん、お母さん。」
「そっかぁ、おヨシさんから話は聞いているよ。私達も自前で薬草を取ったりするから、時々ご一緒しているんだ。」
「ああ、おヨシさんも『光陰星霜』に入っているから、知っているんだ。」
私はおヨシさんを救うため、『光陰星霜』に頼んだのを思い出してそう言った。
「そうなんですよ。おヨシさんに似てるね。それにサキちゃん可愛いねぇ。」
奏さんもそう言いながら、サキちゃんを猫可愛がリします。
サキちゃんも嫌がることなく、されるままになっています。
むむむ、あそこまでやっても平気だったのか。
そんなことを思っていたら、奏さんが提案してきました。
「もう、尾行がばれちゃったから、これからは一緒にお店まで行動しましょう。どうやら、私たち以外、後を付けてる人もいないみたいですしね。」
「そうだね。みんなで一緒に帰ろう。」
こうして、一瞬の緊張も取り越し苦労に終わり、私達は無事に錬金屋に戻ることが出来ました。
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