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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
40/77

40 佐加里騒乱 3

 夜も静まり返った頃、佐加里の街に火の手が上がり出しました。

 『光陰星霜』の一門屋敷も周りが騒がしくなり、火事に気付き始めました。

 幸い火の手はこの屋敷からは遠い所で、火の手が暗闇の中赤く照らされているのを遠目で見ることが出来ます。

 錬金屋のある方角も、幸いにして火が上がった様子はありません。

 ただ、屋敷から見て、数か所火の明かりに照らされています。

 どうやら付け火のようです。


 「客人達、この騒ぎだ。起こしてしまって悪いな。」


 私達が泊っている寝所から出て空を見ていると、そう一門の筆頭の仁藤新之助さんが声を掛けて来ました。


 「まぁ、これだけ派手に火が上がってちゃ、仕方ないよ。それより、そんな恰好をして、火消しに行くのかい?」


 お政さんが、それにそう答えます。


 「いや、さすがに遠すぎるな。助っ人に呼ばれれば駆け付けるが、恐らく探題府の役人と周辺の一門衆で消し止められるだろう。」


 「では、なぜそんな恰好を?」


 「火の場所が、探題府と俺の一門から綺麗に離れた場所なもんで、俺の勘がこう訴えて来てんのよ。そんな訳で、寝所からなるべく出ないでいてくれや。」


 「ふん、お前さんが勘で動くかね。それなりに何か掴んでるんだろ。」


 「さぁな。そんな訳で、九重の旦那と奏とお涼を借りていくぜ。」


 「ああ、ここはあんたらの館だ。勝手におし。」 

 

 それを聞いて、私達と一緒に寝ていた奏さんとお涼さんが、慌てて自分の寝所に戻って行きます。

 別の部屋で、竜馬さんと寝ていた九重さんは、すでに支度を整えて現れました。

 竜馬さんも、杖を肩にかけて一緒にいます。


 「俺も、一緒させて貰うぜ。」


 竜馬さんは、筆頭にそういいました。


 「勝手に動かれては困るぞ客人。まぁ、九重の旦那と一緒に裏門に向かってくれ、うちの二番徒党がいるはずだ。俺達は正面門にまわる。」





 「よし、予定通り火が上がったぞ。俺達はこのまま『光陰星霜』に仕掛ける。」


 「おう。」


 光悦の実戦部隊が武器を手に取り、一門衆の屋敷に向かって行く。


 「光悦様、何もご自身まで足を運ばずともよろしいのでは?」


 「いえ、近日中に私の処分も、あのお方から申し付けられるはずです。なので、私は沙汰を待たずにけじめをつけたいのですよ。」


 「それじゃまるで、この仕事が失敗するような言い方ですぜ。」


 「いくら奇襲を行うとはいえ、あの『光陰星霜』に勝てますか?」


 「始まる前から、そんなこと言わないでください。」


 「いやぁ、いくら魔剣を揃えたところで、あの『光陰星霜』には、勝てないだろ。」


 光悦と番頭の後ろに控えていた男、荷を運び込みを茜達に邪魔された一団を率いていた男が、自嘲気味にそう言った。


 「お前は!だったら、なぜここにいやがる。荷の運び込みも満足に出来なぇ、運び屋風情が。」


 「言うねぇ。俺は、光悦の旦那と一緒でけじめをつけるためよ。錬金屋にいる薬売りと女狐どもだけは、この手で仕留めてやる。」


 「およしなさい。仲間割れなど、見苦しい。では、私達も行きましょう。」


 こうして、光悦達は『光陰星霜』の屋敷を襲撃したのでした。




 先行した光悦の実戦部隊は、『光陰星霜』の屋敷の正面門辿り着くと数名が塀を越えて行き、正面門を解き放った。

 残りの男達は一斉に、正面門から雪崩れ込み、屋敷の玄関へと向かう。

 だが、突然、玄関の扉が蹴り飛ばされて、中から『光陰星霜』の筆頭率いる一団が現れた。


 「随分と派手に暴れてくれるな。ここがどこだかわかっているんだろうな。」


 肩に馬上刀を引っ提げて、仁藤新之助さんはそう言う。


 「やかましい。野郎ども、こいつらを叩き切って名を上げるぞ。」


 「おう!」


 「そうか。なら一門衆筆頭仁藤新之助、いざ参る。腕に自信のある者は掛かってきやがれ。」


 そう言うと、馬上刀を抜き身にして上段に構える。


 「おうよ。こっちには魔剣があるんだ。そう簡単に行くと思うなよ。」


 実戦部隊の一人がそう言って、大剣を構え正対する。


 「そんなもんで、人間が強くなれるかってんだ。」


 仁藤さんは、そう言い放って、上段から一気に大振りの馬上刀を振り下ろす。

 大剣使いの男も、それに応え、剣を繰り出す。

 お互いの剣が交差する。そのまま鍔迫り合いになり、大剣使いの男を押し込む。

 大剣使いは、それを何とか腰を使い体を入れ替えて、仁藤さんをいなすと距離を取る。


 「こいつら、身体強化を使っていやがる。信号弾を上げろ。こっちも身体強化で応戦するぞ。」


 お互い睨み合いながらも、は、後ろに控えている筆頭補佐の佐助さんにそう伝える。

 それを聞いて、佐助は筒状の魔道具に魔力を込めて、天高く打ち上げる。

 上空に打ち上げられた光弾は、上空で花火のように炸裂し、大きな光となる。

 それを合図のようにして、他の男達も武器を構えそれぞれが、相手を見定めて襲い掛かる。




 屋敷の正門前でそんな騒ぎが起きている頃、私も先程の信号弾で、外が明るくなったのを見ました。


 「お政さん、なんか外が騒がしいし、外が今明るくなったけど?」


 私は、お政さんにそう尋ねた。


 「どうやら、本当に何者かがここを襲撃してきたようだね。今の信号は、街中で魔法を使う許可を求めるもんだよ。」


 お政さんは、落ち着いた様子でそう言いました。


 「え、それって。」


 お政さんの言葉を聞いて驚いた私にお政さんは、さらに言葉を続けます。


 「ああ、ここにも人が来るかもしれない。来たら遠慮なく魔法を放つんだよ。それと茜だけじゃなく、お妙も身体強化もかけときな。」


 「は、はい。」


 「わかりました。」


 私とお妙ちゃんは、緊張しながらも、そう答えます。


 「ねぇ、大丈夫なの?」


 お藤ちゃんも、周りが騒がしくなってきて、眠気もなくなってきたのだろう。そう心配そうに声を掛けて来た。


 「お藤ちゃん、心配しないで、ここには私達より強い人が一杯いるから。それにいざとなれば、私達も守ってあげるしね。ね、お妙ちゃん。」


 「はい。お藤、茜さんの言うとおり大丈夫だからね。」


 私とお妙ちゃんで、そう言ってお藤ちゃんをなだめます。


 「しかし、物騒な時に来ちまったね。」


 お政さんのそんな独り言に私は、心の中で反応します。

 これも、私もお妙ちゃんもいるから、どっちが巻き込まれ体質なのかわかんないね。もしかして、二人とも、いや、二人揃っているからなのかな。

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