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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
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39 佐加里騒乱 2

 私達は、『光陰星霜』に着くと、今日は私達とお藤ちゃん、お政さん、竜馬さんがここに泊まって行くことを伝える。

 奏さんとお涼さんは、それを聞いて喜んでから、部屋の準備をするため、奏さんはどこかに伝えに行き、お涼さんは、私達を厨房に案内してくれた。


 厨房は、二つあるらしく、こっちは自炊者向けの厨房でみんなが自由に使っていいそうだ。

 結構な調理用の魔道具が揃えてあるけど、奏さん達は、お金がないと言っていたけど、『光陰星霜」自体は、お金持ちなんだねぇ。

 しばらくすると、奏さんがお藤ちゃんを連れて、こちらに来た。

 それでは、みんなで、料理をしよう。

 今回は、トマトもそれほど量がないので、トマトソースを作りピザとピザパンを作ることにした。

 トマトを湯剥きして、乱切りにし玉ねぎや香草を入れ煮込む。

 その間に、私と奏ちゃん達で小麦粉と酵母を使って一次発酵させただけのピザ生地を作る。

 お藤ちゃんとお妙ちゃんは、お肉屋さんで貰って来たパン生地をお饅頭のように丸めておいてもらう。

 

 そんなこんなをして、ピザは、あと焼くだけにして、ピザパンと枝豆の塩茹でを作る。

 奏ちゃん達の要望でハンバーグを作りたいとのことで、ハンバーグを作る。

 ソースはテリヤキソースとトマトソースを用意した。

 トマトソースの方には、チーズも入れて、チーズハンバーグにする。

 それと和食を数点作って、結構豪華になったけど、パンやピザに和食はどうだったろう。

 お魚とお肉系のおかずを中心に作ったから、まぁ、よしとしよう。

 お藤ちゃんも、村では食べないような物珍しい料理をいろいろ作って、楽しそうにしてくれてるしね。


 「あとは、みんなが揃ったら、仕上げをしよう。」


 「はい、楽しみです。」


 「うん、赤が鮮やかで彩りがいいよね。」


 奏さん達が、出来上がった料理を見てそう感想を言う。


 「今日は、お肉がたくさん食べれるね。お姉ちゃん。」


 「もう、お藤、お肉より、自分の作った野菜が料理になったのを喜んでよ。」


 お妙ちゃん姉妹も、そんな会話をしていた。


 「あー。今日は、洋風の料理が多かったし、枝豆もあるから、日本酒だけでなく、獣人さんから、エールも買って来ればよかったな。」


 私は、向こうでは未成年だったし、こっちでもお酒を飲んでいないこともあり、枝豆を用意したのにビールを用意するのを忘れていたのを、思い出した。


 「エールですか?一門の獣人ひとから、貰って来ましょうか?」


 お涼さんが、私の言葉を聞き、そう訊ねてきたので、お願いする。

 そう言えば、エールとビールって言い方が違うだけで同じなのかな?

 まぁ、貰ってきたら、冷やしておきましょう。



 やがて、お政さんと竜馬さんがこちらに顔を出したので、料理を温め直したり、仕上げの準備をする。

 九重さんも、今日はこっちで稽古をつけていたので、奏さんが呼びに行ってくれた。

 皆が揃い、賑やかに夕食ゆうげが始まる。


 「これが茜殿が錬金術で作った野菜か。」


 九重さんは、枝豆を手にしてそう言う。


 「一応そうですね。こっちの大豆を私のいた世界の大豆の大きさにしたものです。熟す前の豆を塩水で茹でた物です。」


 「へぇ、こんな小さな大豆なんだ。これじゃ大豆という程大きくないな。塩味の中にほのかな甘みがあってうまいなこれは。」


 竜馬さんも気に入ってくれたようで、くだらないことを口走りながらも、続けざまに枝豆を口に入れる。


 「私のお父さんは、夏にこれをビールのつまみに良く食べてましたよ。」


 私はそう言って、竜馬さんに冷えたエールを出しだす。


 「どれ。」


 竜馬さんは、そう言って、差し出されたエールを受け取ると口に運ぶ。


 「どうだい?鳳屋。」


 お政さんは、自分が試す前に竜馬さんの様子を伺う。


 「なるほど。これは合うな。エールも冷やすとすっきりして飲み易いな。」


 「でしょ。それとエールは油物にも合うらしいから、ピザも一緒に食べてみてください。」


 「うん、この料理も上手い。それに確かにエールにも合うな。」


 竜馬さんは、そう喜んで料理やエールを口に運んでいた。

 それを見て、お政さんや九重さんも舌鼓を打ちながら、料理と酒を負けじと口にしていた。

 喜んでくれたようで良かった。

 これで、白菊村での野菜作りも軌道に乗りそうだね。


 お妙ちゃん達も、ピザやハンバーグに舌鼓を打ちながら、わいわい騒いでいる。

 どうやら、こちらにもトマトは受け入れられたようだ。

 トマトももう少しあれば、そのまま食べたりもして貰えたが、こればかりは仕方がない。

 そうこうして『光陰星霜』での一夜はけていった。





 ここは、薬種問屋「蓬莱屋」の一室。

 店主の蓬莱屋光悦のが番頭からの報告を受けていた。


 「失礼します。荷受けを邪魔した連中が、『光陰星霜』に行きました。この時間になっても出て来ませんので、今夜は向こうで一宿するようです。」


 「あの者達は、やはり『光陰星霜』に深い繋がりがありましたか。

 なら、ちょうどいい錬金屋に振り分ける予定の人員も『光陰星霜』に振り分け、仕掛けることにしましょう。

 それと探題府の連中を引き付けるための囮役にも、今夜仕掛けると伝達してください。」


 「わかりました。準備させます。」


 「番頭さん、貧乏くじに付き合わせて済まないね。最後の大一番です。華々しく行くとしましょう。」


 「はい。光悦様に賭けたのは私です。最後まで付き合わせて貰います。」


 茜達が偶然とはいえ、サキちゃんのお母さんの時の事件から始まった一連の騒動に首を突っ込むきっかけを作っていた、その頭の蓬莱屋光悦がついに自ら、動き出したのでした。


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