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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
38/77

38 佐加里騒乱 1

 綾ちゃんが連れ去られた事件から、一か月半が過ぎました。

 佐加里探題府のお役人さんは、今だ街中を慌ただしく駆け回っています。

 ですが、街の人達には今回の一件、事が事だけに公になっていないため、街の雰囲気はいつも通り平穏です。


 あれから、私達の白菊村への農業指導も、私達が当事者になっていることもあり、街の外に出られては、警護が不十分になってしまうと探題府のお役人様に言われて、行くことが出来ていません。

 私が、村に行けなくなったことは、手紙で村には知らせたので、大丈夫です。

 でも、私も野菜のことが気になるので、大市の時にやって来るお妙ちゃんの妹のお藤ちゃんに、状況を聞いたり、村の人からの質問を預かったりするようにお願いしました。


 今日は、大市の日で一カ月ぶりにお藤ちゃんが、佐加里に来てくれます。

 そんな訳で、私とお妙ちゃん、それと迷宮に潜った『光陰星霜』の女の子二人を連れて、大市に顔を出す事にしました。

 『光陰星霜』の彼女らは一応、なにかあるといけないからと九重さんが護衛として手配してくれたのです。

 もっとも、探題府からも厳ついおじさん二人が、私達の後ろをついて来ているので、本当は必要ないのですけどね。

 でも、念には念をということだそうです。心配性ですね。


 市では、生鮮野菜などを見たり、買ったりして、市が終わるころになり、いつもどおりお藤ちゃんが出店している工芸品売場に向かいました。

 閉店前の混雑を掻き分け、無事にお藤ちゃんのところに辿り着きます。


 「こんにちは。お姉ちゃん達。えーと、そちらは、お姉ちゃん達のお友達?」


 お藤ちゃんが私達に気付き、いつもどおり声を掛けてから、私達二人の他に『光陰星霜』の子らが居るのを知り、そう付け加えました。


 「うん、迷宮に探索者として潜っている子だよ。今日はお藤ちゃんが来るから、一緒にと誘ってきたんだ。」


 「こんにちは、初めまして。探索者で魔法を使うかなでです。」


 「こんにちは。同じく、探索者で薬師でもあるりょうといいます。よろしくね。お藤ちゃん。」


 「はい、よろしくお願いします。」


 「お藤ちゃんは、元気だった?それと野菜の方も問題なく育っている?」


 「あ、はい。元気なのが取り得ですから、それと村のみんなは変わりありません。それと野菜ですが、はい、これ。」


 そう言って、お藤ちゃんは籠の中から、布に包まれた物を私に差し出しました。


 「え、もしかして?」


 私はそれを受け取ると、布包みの中を見ます。

 中には、トマトが何種類かとピーマン、枝豆が一束入っていました。


 「ようやく、野菜が採れ始めたので、茜さんにもと思って、持ってきました。」


 「ありがとうね。お藤ちゃん。そうだ、今日は泊っていける?これを使った料理をご馳走するよ。」


 「本当ですか!一応、お母さんには、お姉ちゃんのとこに寄って行くかもと、話してあるので、大丈夫です。」


 お藤ちゃんは、嬉しそうにそう言って来ました。


 「ちょっと、茜さん、そんなこと言っていいんですか。」


 お妙ちゃんが、私達の会話にそう口を挟んできた。

 そうだったね。一応、私達は護衛されているんだった。


 「あ、お藤ちゃん、ちょっと待ってね。お役人さんに聞いてみるから。」


 「いえ、そうではなく。お藤も、一緒に帰ったりしたら、目を付けられちゃいませんか?」


 「でも、あの人達以外に、後を付けているような人もいないし、平気じゃない?」


 「あ、それでしたら、あたしがお藤ちゃんを『光陰星霜』の拠点に連れて行くので、後で茜さん達が拠点で、料理をするというのはどうかしら。」


 「そうね。拠点なら調理用の魔道具も一通り揃っているし、見張りが錬金屋にいても、お藤ちゃんは目につかないし、それに、まさかうちの『光陰星霜』を襲おうだなんて思わないでしょ。」


 『光陰星霜』の二人がそう、助け船を出してくれました。

 なので、私も、お妙ちゃんを落としにかかります。


 「そうだね。どうかな?お妙ちゃん。」


 「うーん、わかりました。いいでしょう。」


 お妙ちゃんは、悩みながらも、私とお藤ちゃんの哀願するような、視線に耐え切れなくなったのか、許可を出してくれました。

 私とお藤ちゃんは、顔を見合わせて喜びます。

 

 「よし、そうと決まれば、私は戻って準備をしておこう。」


 「私は、売れ残った工芸品を問屋さんに売ってから、奏さんと拠点とやらに向かいますね。」


 「では、奏ちゃん。お藤ちゃんを拠点に案内してね。私達は、お役人さんに話だけしておくから。」


 「待って、役人には、私が話しておきます。茜さん達は、まだ、ここでお藤ちゃんと話していてください。」


 私が、そう言って、奏さんとお藤ちゃんと別れようとすると、お涼さんが、そう言ってお役人さんの所にそれとなく向かってくれました。

 おかげで、もう少しお藤ちゃんと話せて、村の様子や野菜のことを詳しく聞けました。

 お涼さんが戻って来て、一応、お役人さんから承諾を貰えたらしいので、私達は、ここで一度、お藤ちゃんと別れることにしました。



 お店に戻って、お政さんに事情を話すと、まぁ、仕方がないねという顔をされた。

 そして、お政さんと竜馬さんも店を閉じたら、『光陰星霜』に来て、一緒にご飯を食べると言われた。

 お政さんも新しい野菜に興味があるのかな。

 でも、そんなに数は無いから何を作ろうか。

 そんなことを思ってたら、私が向こうで揉め事を起こさないか心配だから、顔を出してくれるそうだ。

 お政さんも、心配性だね。

 それと夜も遅くなるから、向こうで部屋を借りて、泊って行くことにするそうだ。

 その辺は、物騒だから、仕方がないかな。

 だから、夕食の準備で向こうに行ったとき、泊る場所の手配とかして貰うよう伝えておくよう頼まれた。 


 とりあえず、『光陰星霜』に向かう前にいくつか買い物を買い足そうと、大陸から来た獣人さんが営んでいる精肉店に寄った。


 「お、いらっしゃい。茜かい。」


 「すみません。ドライソーセージを一本と柔らかいチーズを一つ、それと申し訳ないのですがパンの酵母分けて貰えますか?」


 「あいよ、なんなら、パンも今作っているところだ。パン生地も持っていくか?」


 「パン生地ですか。それも頂いていいですか?」


 「おう、今持ってくるから待ってな。」 


 ここのお店は、その場で食べられる軽食のような物もお店で出しているので、お肉だけでなく、結構手広く扱っているお店なのです。

 大陸の故郷の食材もあり、獣人さんを中心に結構な利用者がいます。

 洋風の料理を作るとき、買わせて貰っているので、私も見た目、獣人ということもあり、顔なじみさんです。

 そうして、注文した物を貰い、パンの焼く温度とかを教えて貰い、お金を払って店を出ました。

 その時、いいお野菜を今度持ってきますと話しておいた。

 トマトは、生で挟んでも、これから作るトマトソースにしたり、いろいろ使い勝手がいいので、まず、持ち込んで使って貰い。

 気に入って貰えたら、白菊村の野菜を買って貰おう。

 そんなことを考えながら、お店を後にして、『光陰星霜』へと、向かいました。 

 諸般の事情から、作品のストックがなくなったので次回の予告を休止しております。

 よろしければブックマーク、評価、ご意見、感想などよろしくお願いします。

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