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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
37/77

37 子供達と冒険 3


 竜馬は、追っていた男の草の掻き分ける音が消え、気配も見失ってしまった。

 そのため、走る速度を落とし、警戒しながら、ゆっくり進む。

 狩る方から、狩られる方になっちまったか。まぁ、向こうのお手並み拝見と行くか。

 突く、払うが基本の槍では、視界が効かない草むらでの戦闘は不利になると判断し、取り回しのいい直刀に換えた。

 槍を杖に戻し、今度は杖を直刀を手にする。まったく便利な魔道具だよな。仕組みはよくわかんないがね。

 

 一歩、一歩、慎重に歩みを進めると、突然、真横から気配を感じ、剣を突き立てられた。

 咄嗟に、竜馬は、刀でそれを受け止める。


 「いい反応だ。だが、これならどうだ。」


 男は、剣を押しやり、距離を取り、再び気配を消す。

 まいったな。本職相手に俺の腕がどこまで通じるかな。

 竜馬は、相手がただのならず者でないとわかり、そんな感想を抱きながら、神経を研ぎ澄ませる。

 後ろか。

 今度は、相手は切り込まずに、防御のし難い刺突で攻撃をしてくる。

 竜馬は、なんとかその攻撃を躱し、相手がいた場所を切り払う。

 しかし、手ごたえがない。

 そして、再び、気配が感じ取れなくなる。

 竜馬は、動けずに、再度の襲撃に備え身構える。


 だが、しばらく経っても反応はなかった。

 くそ、やられた。逃げられたか。

 さて、どうするか。

 追うにしても、完全に見失ってしまった。

 しかし、綾ちゃんや俺らの顔が割れてしまってるのは、まずいよな。

 とりあえず、茜達のところに戻って、子供達とも合流しないとだな。


 茜は、竜馬が戻ってくるのを見てあんどするが、その竜馬の右腕が血だらけになっているのを見て、心配した。


 「なに、心配ない。俺の薬をこうして塗り込めば。っと。」


 竜馬は、緊張が解け、自分の腕が血だらけなのに気付き、そう言って、懐から軟膏を取りだし、傷口に塗り込む。

 すると、流れ出ていた血が止まり、傷口が見えなくなった。


 「すごいね。そこ薬、ガマの油も真っ青の効き目だね。」


 「なんだいそりゃ?」


 「私のいた世界の昔の薬なんだけど、細かなことは覚えてないけど、紙を細かく切って、切れ味を証明した刀を、ガマの油の薬塗った腕に当てても切れないよという口上で売っていたんだよ。」


 「口上って、実際は違ったのか?」


 「さぁ?わかんないです。なんせ私の生まれるずっと前の物ですので。」


 「まぁ、いいか。俺の売ってる薬は、ほらご覧のとおりだ。」


 そう言って、布で傷のあった腕を拭い去る。すると本当に傷跡も残っていない。

 凄いけど、軟膏にしてあるからか、回復薬と違って効き目は長持ちしそうだけど、回復薬を傷口に掛けるのと同じ効能だよね。

 

 私の反応がいまいちだったので、竜馬さんは、薬の話をやめ、追っていた男には結局逃げられたことを話した。

 こちらも、もう一人の男に傷を与えたが、逃げられたことを伝えた。


 竜馬さんは、しばらく、考えてから、辺りを見回わす。

 そして私の魔法で沼に沈んで頭だけ出している男達を見て、私にこう尋ねた。


 「あれ、魔法が切れたらどうなるんだ。」


 「えーと、地面が固まって、そこに埋まっている状態になります。」


 「なんか、えげつなぇ、魔法だな。なら、まぁいいや。すぐさま、サキ坊達を回収して、街に戻るぞ。」


 そうだ、サキちゃん達も心配だね。早く戻らなきゃ。ちゃんと大人しくしてくれてるかな。


 「そうだった。サキちゃんも心配だし、綾ちゃんの無事も早く知らせてあげないとだよね。」


 そんな話をしていると、綾ちゃんが目を覚ましました。

 どこか痛いところはないかとか聞いたが、どこも異常はないようで、まずは一安心です。


 そうして私達は、サキちゃん達の所に戻りました。

 サキちゃん達は、私達が戻ると一斉に駆け出してきました。

 そして、綾ちゃんの無事を確認するとみんなで喜こんでいました。

 竜馬さんは、サキちゃん達にここを誰か通らなかった聞きましたが、誰も通ていないとのことでした。

 逃げた男達は街に戻らなかったのでしょうか。

 それとも、ここを通らずに遠回りをして向かったのでしょうか。


 「でもなんで、男達はわざわざ門を通らずに街に入ったのでしょう?」


 「これは、公然の秘密だが、門の入口にも魔力を探知する仕組みがあるんだ。だから、犯罪者は街に入ることができない。」


 「そんな風になっているのですね。」


 「それともう一つ、魔力を持った武器や魔道具を持ち込む際も反応があって分かるんだ。持ち込み許可がある物はこの杖のようにわかるところに鑑札がついてるか、持ち込む荷馬車に鑑札がつけられているんだ。だから、鑑札の許可がない魔道具を持ち込んだという可能性もある。」


 「どっちにしろ、そんなことが行われていたら、それって大問題じゃないですか?」


 「ああ。なので、急いで戻ってこのことを知らせるぞ。」


 私と竜馬さんでそんな話をしていると、サキちゃんが私に話しかけてきた。


 「あの、あっちにも綾ちゃんを連れ去った奴の匂いがある。」


 そう言って、使われていない民家の方向を指す。


 「うん?ありゃ、貴族様の鷹狩りの際の休憩所じゃないか。まぁ、行ってみるか。茜と妙はここで子供達を見てろ。」


 その方向を見て、竜馬さんがそう言った。

 そして、使われている気配がない民家に慎重に近づき、中の様子を伺う。

 中に人はいないのだろう。竜馬さんは小走りに戻って来て、こう言った。


 「中に何やら荷物がある。一応取り逃がした奴らが戻ってくるかもしれないから、俺がここに残る。なので、お前らは、街に行ってこのことを伝えて、役人をここによこしてくれ。」


 「わかりました。すぐに役人を連れて戻ってきますね。さぁ、皆行きましょう。」


 私はそう言うと、まだ元気のない綾ちゃんを背負って街へと急ぎます。

 お妙ちゃんは、最後尾でサキちゃん達を見ながら、私についてきます。

 街の門に無事辿り着くと、私達は今起こったことを門番に伝えます。

 門番さんは、事情を聴くと、街の警備担当の右衛門佐をすぐに呼んで来てくれました。


 右衛門佐の方は、すぐにサキちゃん達に抜け道の案内をして貰うように頼み、右衛門大尉の人達に指示をだし、サキちゃん達と共に抜け道の確認に向かいました。

 右衛門佐は、右衛門少尉に御狩場の休息所のあらため許可を探題府に得られるよう手配し、右衛門佐自身は、私とお妙ちゃん、あと残りの部下を率いて、すぐさま竜馬さんがいる場所に向かってくれました。


 私達は、竜馬さんの所に戻ると、逃げた一味はここに来なかったようで、竜馬さんがこちらに手を振って待っていました。

 竜馬さんに、なにこともなく良かったです。

 竜馬さんは、右衛門の役人を幾人か連れて、綾ちゃんを連れ出した連中が居た場所の案内をすることになりました。

 一応、魔法で埋めていった人もいるので、魔法を使える役人さんも同行してくれました。

 魔法が使える人がいてよかったです。もし、いなかったら、私が引きずり出すために戻らなければなりませんでした。

 あの、惨劇を再び見るのは、嫌ですからね。


 それから、私達は、右衛門佐さん達と休憩所の前で待っていると、探題府から休息所の検め許可と魔導錠の解除鍵を持って来た右衛門少尉の到着しました。

 そこで、私達の護衛を一人残し、他の人達は、休憩所の中の検分を行ったようです。

 中には魔法武器や戦闘用の魔道具などが置かれていたらしいです。

 しかも、一部は既に街中に運び込まれた形跡があったとのことです。


 サキちゃん達の方も、街と外をつなぐ抜け道の確認が行われ、他にも抜け道がないか、至急、調査することになったようです。

 それと、街中の気配については、既に時間が経過していたのと、色々雑多な臭いが多く、辿ることが出来なかったようです。


 そして、私達とサキちゃん達は、抜け道の発見とその後の綾ちゃん誘拐犯の捕縛への協力の褒賞を貰いました。

 ただ、サキちゃん達は、許可なく街の外に出た罰との相殺で褒賞は少し減額されたようです。

 でも、まぁ、無許可で街の外に出る刑罰は、佐加里からの所払いですから、罰せられないでよかったでしょう。


 あと、魔法で埋められた一味の人は、末端の人らしく、あの場所の見張りと荷をあそこまで運び込んだだけだったようで、荷の運び込みには関与してなかったそうです。

 魔道具の佐加里への運び込みは、一度行われただけのようで、夜に街に荷を持つ込み、朝から昼にかけて街の目的地に届ける予定だったようです。

 そして、今回の昼戻って来て、また夜に残りを運び込む予定だったらしいです。

 運び込みも、佐加里の近くを流れる河川の河口付近の港で雇われたようで、どこからの荷物とかもわからずじまいだそうです。


 結局、あの荷物は、街中に半分近く持ち込まれて、どこに保管されて、何に使われるのかもわかりません。

 それと、探題府で管理していたお狩場の休憩所を連中が魔導錠を壊さずに使っていたので、探題府にも協力者がいるかもしれないとのことです。

 なので、知らない役人が訪ねて来ても信用しないようにと右衛門佐の人に言われました。

 そんなことがあると、物騒ですね。


 こうして、なにやら、きな臭い騒動の予感を残しつつ、今回の一件は終わったのでした。 

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